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開業時の東海道新幹線は「時速160キロ運転」だった!? 「本気出さない運転」だった理由とは

2024年9月28日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

1964年に開業した東海道新幹線は、時速200キロ超の営業運転を可能とした、世界で初めての高速鉄道です。鉄道史に残る新幹線は、10月1日の開業時から、最高速度の時速210キロで、大勢の旅客を東へ西へ運んだ……と言いたいところなのですが、開業時の東海道新幹線は、時速160キロで走る、「ちょっと速い程度」の路線でしかありませんでした。

1964年に開業した東海道新幹線(鉄道博物館の再現展示、報道公開時に撮影)
1964年に開業した東海道新幹線(鉄道博物館の再現展示、報道公開時に撮影)

なぜ開業時から時速210キロ運転ができなかったのか、というと、着工から開業まで5年という短期間で工事が進められた東海道新幹線は、開業時でも線路の路盤が固まりきっていなかったためと言われています。

新幹線の開業当時のダイヤは、東京~新大阪間を「ひかり」が4時間、「こだま」が5時間で走破するもので、在来線時代の特急「こだま」(東京~大阪間6時間30分)より所要時間は短くなっているのですが、新幹線の本領発揮とは言えませんでした。ただし、時速160キロで走ると定刻で運転できるダイヤが組まれていたものの、絶対に時速210キロ運転ができなかったわけではなく、遅延時には最高速度での運転が可能でした。

当初はスロー運転だった東海道新幹線も、路盤が安定したことを受けて、1965年11月にダイヤ改正を実施。晴れて時速210キロ運転が本格化し、「ひかり」は東京~新大阪間を3時間10分、「こだま」も4時間で結ぶダイヤとなりました。その後、後継車両のデビューや「のぞみ」の運転開始などを経た東海道新幹線。現在の最高速度は時速285キロで、東京~新大阪間の所要時間は最速2時間21分となっています。

年月日 最高速度 備考
1964年10月1日 時速210キロ 東海道新幹線開業
当時は時速160キロダイヤ
1965年11月1日 時速210キロ 時速210キロの本格運転開始
1986年11月1日 時速220キロ 100系の本格投入開始
(参考:1989年3月11日) (山陽新幹線:時速230キロ) 100系「グランドひかり」デビュー
1992年3月14日 時速270キロ 「のぞみ」運転開始
(参考:1997年3月22日) (山陽新幹線:時速300キロ) 500系デビュー
(参考:2003年10月1日) (東海道新幹線時速270キロ統一) 100系引退によるもの
2015年3月14日 時速285キロ 当時はN700Aタイプ限定
2020年3月14日 (東海道新幹線時速285キロ統一) 700系引退によるもの

さて、スローな高速鉄道として開業した東海道新幹線ですが、開業日の上り1番列車では、堂々たる時速210キロ運転が行われていました。当時連結されていたビュフェ車(軽食などを提供する車両)には、乗客向けの速度計が設置されており、時速210キロで走る瞬間を皆が待ちわびていたのだとか。乗客の想いに応えた当時の運転士は、一部区間であえてスピードを落とし、その後に「遅延回復」として時速210キロまで加速したそうです。ただし、最終的には東京駅に早く着きそうになってしまい、東京駅手前では並走する山手線に抜かされてしまうほど、ゆっくり走ったのだそう。今では考えられない、おおらかな時代のできごとです。

 

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