新幹線の初代車両といえば、団子鼻が愛らしい0系です。この0系のおもちゃでは、特に古いものを中心に、先頭部の鼻の部分が赤く塗られていたり、時には光る構造となっているものもあります。いかにもおもちゃ的なデザインで、中には本当に玩具としてデフォルメした製品もあるのでしょう。しかし、「新幹線の鼻が光る」という点に関しては、必ずしも間違いではありませんでした。
この鼻は、連結器を格納する部分のカバーです。新幹線開業時に導入された0系では、鼻の部分のカバーはアクリル製で、ヘッドライトやテールライトの光が、カバーからもうっすらと漏れるようになっていました。これは、結果的にそうなってしまったのではなく、最初から意図した設計で、「光前頭」という名前もつけられていました。
また、0系ではヘッドライト・テールライトの「おこぼれ」を貰って光っていた光前頭ですが、0系の前に試作された試験用電車1000形では、カバーの裏に蛍光灯を配置し、直接光らせていたのだそう。時速200キロ超での営業運転という、当時としては前例のない高速運転に向けて、少しでも視認性を高めようとしていたのでしょうか。
そんな光前頭も、新幹線開業後はそれほど効果のあるものとは認識されなかったよう。むしろ、アクリル製のこのカバーが、鳥などとの衝突によって破壊されるというトラブルが多発してしまいました。破損対策として、国鉄はこのカバーをFRP製に交換。さらに最終的には塗装されてしまったことで、0系の「光る鼻」は見られなくなってしまいました。
現在、0系の保存車両は各地にありますが、そのほとんどは光らない先頭部カバーを装備した姿です。しかし、鉄道博物館に保存されている21形2号車では、同館での保存展示開始時に、実際に光る、アクリル製の光前頭が取り付けられて展示されています。かつての光る鼻を装着している0系は、今はこの21形2号車の1両だけのようです。