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なぜバスに「パンタグラフ」を導入? 京急グループのバス会社が実証運行に向け検討合意

2024年10月3日(木) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

京急グループの川崎鶴見臨港バスと、東芝、Drive Electro Technologyの3社は10月2日、約10分で充電可能な「超急速充電EVバス」運行の実証実験開始に向け、共同検討を合意したと発表しました。

川崎鶴見臨港バスが導入する「超急速充電EVバス」のイメージ
川崎鶴見臨港バスが導入する「超急速充電EVバス」のイメージ

いま全国各地で導入が進んでいるEVバスですが、これは車庫でケーブルをつなぎ充電する仕組みです。EVバスでは、従来型のディーゼルエンジンを用いたバスよりも走行時の環境負荷が低減されるというメリットがあるのですが、充電に時間を要する、充電器の数に制約があることから車両の運用効率に影響が出る、広い充電スペースと多くの充電設備を導入する必要がある、といった課題がありました。

そこで、今回3社が実証運行を目指すのが、パンタグラフを用いた超急速充電EVバス。車両には、東芝が開発したリチウムイオン二次電池「SCiB」と、大電力に対応したパンタグラフを搭載することで、超急速充電を可能とします。これにより、従来型のEVバスでは充電時間が数時間かかっていたところ、本方式では約10分で充電が完了するといいます。

このパンタグラフつきのEVバスは、実は海外ではすでに導入例があります。また国内でも、長野県と富山県を結ぶ観光ルート「立山黒部アルペンルート」を構成する一つ、「関電トンネル電気バス」が、同様のパンタグラフつきバスを導入しています。

関電トンネル電気バスは、1964年の関電トンネル一般開放時から使われてきたトロリーバスを置き換えるため、2019年に運行を開始したバス。それまでのトロリーバスは、道路の上に架線を張り、パンタグラフ(正確にはトロリーポール)を用いて電気を得て走る、電車のような仕組み(法律上も鉄道の一種)の乗り物でした。それを置き換えるために導入された電気バスも、国立公園内を通るための環境負荷低減などを考慮した結果、パンタグラフを使用して充電するタイプの車両となりました。

関電トンネル電気バス
関電トンネル電気バス

関電トンネル電気バスでは、長野県の扇沢駅で、パンタグラフを上昇し充電する様子が見られます。パンタグラフとはいっても、鉄道用のそれとは見た目は異なり、パンタグラフを当てる地上充電設備も鉄道用の架線とは別物です。この路線では、充電は1回あたり10分程度で終了しており、1充電で扇沢~黒部ダム間を往復しています。

パンタグラフを上げて充電中の関電トンネル電気バス
パンタグラフを上げて充電中の関電トンネル電気バス

今回の実証事業に向けた動きに名を連ねた川崎鶴見臨港バスでは、新車を導入した関電トンネル電気バスとは異なり、既存のディーゼルバスをEVバスに改造するといいます。また、関電トンネル電気バスは私道での営業運行となっていましたが、川崎鶴見臨港バスでの営業運行が実現すれば、同システムでは国内初の公道における営業走行となります。

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