10月13日の深夜、鉄道写真を趣味とする者、いわゆる「撮り鉄」が、またトラブルを起こしました。「事件」の現場は、大阪市。阪急電鉄十三駅の近くにある踏切です。すでに報道もされているので、その詳細は、「閉じた踏切のなかでカメラを構え続けた」という事実の提示にとどめます。
撮り鉄たちの目当ては、「救援車」というレア車両を連結した回送列車。事故や災害の発生時、現場に復旧資材などを届ける役目の車両ですが、その特性上、走っている姿は滅多に見られません。それが動くという情報を仕入れた撮り鉄が線路脇に集まり、「事件」を起こしたというわけです。筆者も撮り鉄のひとりですが、「事件」を引き起こした者たちは非難されて当然、猛省すべきと考えます。
ですが、どんな事件や事故も原因がわからなければ、その対策はとれません。今回は「事件」の当事者に対する嫌悪感は脇に置き、撮り鉄の視点から、「『事件』に至った原因」を考えたいと思います。
筆者が考える「事件」の大きな原因は、ふたつ。ひとつ目は、「現場の踏切では、停車中の車両を明るく撮れるから」。回送列車が走ったのは深夜のため、当然、周囲は真っ暗です。ですが、現場の踏切は、遠くの被写体を撮れる機材を使えば、照明が点いている十三駅に車両が停車しているシーンを撮れます。真っ暗で撮れる場所が非常に限られるなか、比較的環境のよい十三駅の踏切を撮影場所に選んだ人が多かったと思われます。
ふたつ目は、「救援車が先頭に出るのが、十三駅から先の区間だけだったから」。回送列車の運転区間は、救援車が常駐していた車両基地から他路線にある別の車両基地への片道。出発地を出る段階では、救援車は編成の後ろに連結されていました。しかし、列車は十三駅で進行方向を変え、目的地までは救援車が先頭に出ます。撮り鉄は、「ヘッドライトを点ける列車の先頭を撮りたい」という、習性のようなものがあります。これにより、救援車が先頭になる区間に撮り鉄が集まったと考えられます。
では、こうした「事件」の発生確率を下げる対策として、筆者は「救援車の連結位置を変えること」を挙げます。阪急の救援車はモーターがなく、単独では走れません。そのため、今回の回送列車は、自走できる一般車両と連結しての運転でした。今回連結された一般車両は、2両編成が2本。救援車がその間に入れば、先頭に出ることはなくなります。救援車を連結した列車そのものは珍しいですが、「先頭に出る機会」をなくすことで、撮影者は減っていた、または撮影者の1か所への集中を防げたかもしれません。恥ずかしい話ですが、今後は「隠す」という対策も必要になるのでしょうか。
ただ、最後に付記しますが、今回の撮り鉄の迷惑行為は、「鉄道会社も対策を考えたほうがよいのかな」と思わせる程度にはひどいものです。「撮れさえすれば、それでよい」などという愚かな考えは、いずれ自分の首を絞める。すぐに捨てよ、と、同業者として申し上げておきます。