11月30日、2024年度の立山黒部アルペンルート営業終了にあわせ、立山トンネルトロリーバスがラストランを迎えました。トロリーバスとは、道路上を走るバスですが、電車と同様に架線から電気を得て走行するという乗り物。日本では「無軌条電車」といい、法律上は鉄道の一種とされています。
かつては都市部を中心に国内各地で見られたトロリーバスですが、一般的な路線バスなどに置き換えられて次々と消滅していました。一方、立山黒部アルペンルートでは、環境対策としてトロリーバスが導入され、関西電力による関電トンネルトロリーバス、立山黒部貫光による立山トンネルトロリーバスが、2000年代に入っても運行されていました。しかしながら、車両の老朽化などを理由に、前者は2018年度に電気バスへ置き換えられ廃止。後者の立山トンネルトロリーバスも、今回ラストランとなりました。
今回のトロリーバス廃止で、国内から「電気を得て走るトロリーバス」は全廃となりました。しかし、法律上の「無軌条電車」は、実は12月以降も残っています。
その路線とは、名古屋市内を走る「ゆとりーとライン」。「ガイドウェイバス」というシステムを採用した路線で、郊外では一般的な路線バス同様に公道を走る一方、大曽根~小幡緑地間では、新交通システムのような専用軌道を走行します。車両は普通の路線バスのようですが、車体下部に案内輪が設置されており、専用軌道ではハンドルから手を離した状態で運転できるという仕組みです。
このガイドウェイバスは、日本の法律では、非電化の無軌条電車、つまり「『電気を得て走るトロリーバス』の非電化版」という扱いです。日本ではほかにも、2005年の「愛・地球博」で運行された磁気誘導式のバスシステム「IMTS」が、ガイドウェイバス同様に鉄道として扱われており、磁気誘導式区間の運転には「磁気誘導式内燃車」という種類の免許が必要でした(ただし専用道=鉄道区間の営業運行時は無人運転でした)。日本の法律では、レールがなくとも走行レーンが固定されている(=一般のバスやBRTのように別の道路へと迂回できない)乗り物については、鉄道の一種として扱われるようです。
そんな「最後の無軌条電車」となったゆとりーとラインですが、こちらも現在は廃止が取り沙汰されているといいます。ガイドウェイバスでは、その構造上、車両はツーステップバスとせざるを得ず、バリアフリー化に逆行しています。また、鉄道路線とバス路線を直通する関係上、運転士は鉄道の免許とバスの免許が必要。先進的なシステムですが、デメリットも多いのです。名古屋市などでは、将来的に、専用軌道のBRT専用道化や、自動運転バスを導入し、鉄道路線としてのゆとりーとラインを廃止することを検討しているといいます。