鉄道会社では、新たに車両を導入するとき、ほかの鉄道事業者から車両を譲ってもらうことがあります。とくに地方の中小私鉄ではその傾向が強く、JRや大手私鉄などの車両を譲受し、いまも使い続けている事例が多く見られます。
そのなかで少数ながら見られるのが、「中古の中古車」。譲渡先(車両にとっては2社目)の鉄道会社で役目を終えた車両が、再び別の鉄道会社に渡り、「第三の人生(車生?)」を送るというものです。
「転勤族」とも呼べるこうした車両の中で少し珍しい事例が、豊橋鉄道渥美線の1800系。この形式は東急7200系の中古車なのですが、その中に一部、東急から別の会社への譲渡を経験し、「中古の中古車」として豊橋に流れ着いた車両がいます。同一形式にまぎれた、異色の経歴を持つ変わりダネです。
これに該当する車両は、1810編成の2810号車、1860号車(新豊橋駅寄りの2両)。これらは上田電鉄に在籍していた元・東急7200系を、「中古の中古車」として導入したものです。
「中古の中古車」が豊橋鉄道にやってきたのは、2008年のこと。そこから時をさかのぼって7年、2001年に発生した車両基地の火災が、そのきっかけです。
豊橋鉄道は合計30両の東急7200系を譲受しましたが、このうち営業運転に使用したのは27両(3両編成9本分)。残りの3両は、車両修理などの際に交換用の部品を確保するための、いわゆる「部品取り」という位置づけでした。
しかし、火災により、1801編成の2両が焼けてしまいました。これらは修理を断念し、廃車が決まったのですが、これでは走れる車両が不足することになります。そこで、部品取り車両のうち2両が、急きょ営業用として復活。1801編成のうち無傷だった1両と組み合わせ、2代目の1801編成が仕立てられました。
そして2008年、豊橋鉄道は渥美線用の3両編成1本を増強。1800系と同じ元・東急7200系を上田電鉄から2両譲受し、部品取り用で残っていた1両と組み合わせて運用に投入しました。
渥美線の「中古の中古車」は、運用体制の変化と、営業用車両の増強によって生まれたものだったのです。見た目にはわからず、また火災という痛ましい出来事が背景にあるものの、異端な「転勤族」の車両が同一形式に紛れ込むという事例は、趣味的には非常におもしろい例ではないかと筆者は思います。