相模湾を横目に、山間の区間や道路上などを走り、鉄道としてさまざまな「顔」を見せてくれる江ノ島電鉄(以下、「江ノ電」)。同社に在籍する車両の4割を占め、主力として使われているのが、1000形です。2両編成6本が8年間にわたって増備された1000形ですが、その最初の車両(1001編成・1002編成)がデビューしたのは1979年。今年で45歳という、立派な「中年」ですが、その見た目には古さを感じません。まさにイケてるおじさん、「イケおじ電車」と呼ぶにふさわしい車両です。
1000形は当時、「江ノ電で48年ぶりの完全新造車」として歓迎されました。江ノ電はその導入にあたり、メーカーが提示した複数の車体デザイン案をもとに、約1年かけて打ち合わせをしたそうです。車体のデザイン案は複数出され、最終的に、やや角張った車体と大型窓を組み合わせたスタイルを採用。塗装は淡いグリーンのツートンで、ヘッドライトは丸型とし、やわらかい雰囲気を演出しました。これまでの江ノ電にない車体スタイルを採用した一方で、駆動方式は昔ながらのツリカケ式。外観は「今風」なのに、床下から聞こえる音は「なんか古臭い」、そんなギャップがひとつの魅力です。
1983年に増備された1201編成はヘッドライトを角型のものに変え、より精悍なイメージに。そして最終増備車の1501編成(1986年)、1502編成(1987年)では駆動方式をカルダン式に変えたほか、「サンラインカラー」と呼ばれる暖色系のカラーリングを採用。同じ形式ながら、その見た目はバリエーション豊かでした。
1000形はデビュー後、塗装変更が繰り返され、広告電車、他社とのコラボ塗装車を除き、現在はクリーム色とダークグリーンのツートンとなっています。また、車体更新で集電装置を交換したほか、1201編成以外は行先表示もLED式に変わりました。ですが、車体の形や駆動装置はデビュー時のまま。1201編成までの4本は、関東地区における旅客営業用車両で最後のツリカケ駆動車となっています。
鉄道車両の「45歳」は、次世代車両への置き換えが検討されてもおかしくない年齢です。江ノ電には現在、この年齢をはるかに上回る300形305編成(64歳)がいますが、こちらは足回りをカルダン駆動に更新しています。一方、45歳の1001編成、1002編成は旧来のツリカケ駆動のまま。この足回りの違いが、将来の世代交代にどう影響するか、注目です。