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環状路線なのに「乗り換え必須」とは? 大阪環状線に「逆『の』の字運転」だった時代があった

2024年11月24日(日) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

関西の一大都市、大阪の中心部をぐるっと1周し、たくさんの人の足として走る大阪環状線。同線で大阪駅から天王寺駅へ行く場合、西九条、弁天町方面へ向かう「内回り」、京橋、鶴橋方面へ向かう「外回り」、どちらの方向の列車でも、乗り換えなしで天王寺駅に到達できます。ですが、大阪環状線が円形の路線になった当初、大阪駅から天王寺駅までを乗り換えなしで行けたのは、京橋、鶴橋方面の外回り列車(大阪駅基準)だけでした。

現在の大阪環状線を走る専用車両の323系
現在の大阪環状線を走る専用車両の323系

大阪環状線は1892年、大阪鉄道の建設による路線が最初に開業し、1961年には複数の路線が組み合わさって円形の路線になりました。ですがその当時、現在と同じように路線を周回し続ける列車は走っていませんでした。たしかに同年、路線図のうえではひとつの円になりましたが、実際は西九条駅で線路が分断されており、大阪方面から来た列車が同駅を超えた先、弁天町・天王寺方面に進めなかったのです。

当時の大阪環状線の運転形態は、「西九条~弁天町~天王寺~鶴橋~京橋~大阪~西九条駅と走り、その先は同駅で分岐する桜島線(現在のJRゆめ咲線)の桜島駅へ向かう」という、ひらがなの「の」を逆に書くようなものでした。現在の都営地下鉄大江戸線と同じような形態です。この時代の西九条駅は、桜島・大阪方面行きのホームが地上、天王寺方面行きのホームが高架上にあり、同駅での乗り換えにはアップダウンの手間がかかっていました。

1961年、大阪環状線の全通当時の運転形態。西九条駅から天王寺方面へ走って路線を一周し、桜島線に入るという、2路線で一体的な運用が組まれていました
1961年、大阪環状線の全通当時の運転形態。西九条駅から天王寺方面へ走って路線を一周し、桜島線に入るという、2路線で一体的な運用が組まれていました

その後、西九条駅の高架化工事が進められ、大阪環状線は1964年3月、環状運転を開始。全線開通から3年を経てようやく、現在のそれに近い運転形態が実現しました。その後、同線は周辺路線との直通運転も開始。現在は奈良方面へのびる関西本線(大和路線)、関西空港、和歌山方面へ走る阪和線との直通列車も数多く運転されています。

一方、同年以降の桜島線は、支線のような立ち位置に。とくに国鉄末期の時点では、同線と大阪環状線の直通列車は車両基地への出入庫を伴う列車を除いて、ほとんどありませんでした。両線の本格的な直通運転の再開は、桜島線の沿線にユニバーサル・スタジオ・ジャパンが開業し、「JRゆめ咲線」の愛称が与えられた2001年を待つことになります。

大阪環状線を走るJRゆめ咲線(桜島線)直通・桜島行きの列車。103系のラッピング車両も、いまは懐かしのひとコマです
大阪環状線を走るJRゆめ咲線(桜島線)直通・桜島行きの列車。103系のラッピング車両も、いまは懐かしのひとコマです

余談ですが、大阪環状線の今宮駅から西の一部区間は、貨物専用の「大阪臨港線」がその源流です。この路線は、大正~弁天町間にかつて存在した境川信号場から臨海部へ走り、大阪港(おおさかみなと)駅(現在の天保山付近)へ向かっていました。天保山は、2025年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場、夢洲にも近い場所。大阪臨港線は2006年に廃止されましたが、もし今も存続していたら、万博輸送の重要路線として重宝されたかもしれません。

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