愛知県や岐阜県の2県を走る大手私鉄、名古屋鉄道(名鉄)。豊橋~名鉄岐阜間の名古屋本線や、2005年に開港した中部国際空港「セントレア」までのアクセスを担う常滑線など、20路線を運営する大手私鉄です。この名鉄の主力格となる名古屋本線ですが、起点である豊橋駅では、JR東海が管理する駅施設の中で、JR飯田線のりばの隣にある1線のみを使用するという、とても肩身が狭い状態となっています。では、何故このような不思議な環境が生まれてしまったのでしょうか。
かつて、JR飯田線は豊川鉄道という私鉄の路線でした。名古屋本線の前身である愛知電気鉄道豊橋線が豊橋手前の小坂井まで延伸した際、同地から豊橋までの間に愛知電気鉄道が単線の線路を敷設し、既存の豊川鉄道の単線と合わせて複線とすることで、平井信号場~豊橋駅間の3.9キロメートルの線路や、豊橋駅ののりばを両者で共用することとなりました。この取り決めが、豊川鉄道が国鉄に買収され、そしてJRとなった現在までも続いているのです。
現在、名古屋本線は取り決めにより、この共用区間では1時間に最大6本しか列車を運転することができません。名古屋本線は、終点の名鉄岐阜駅手前にも単線区間があるほか、他線からの直通があるために日中も最小2分間隔で運転される神宮前~枇杷島信号場間など、多くのボトルネックを有しており、並行路線であるJR線との競争上の弱点となっています。しかしながら、これらの弱点が、時速120キロ運転を行う一部特別車特急など、数多くの「名鉄らしさ」を産んでいるのかもしれません。