時速200キロ以上で走る新幹線の線路は、スピードを出しやすくするため、できるだけアップダウンは少なくなるよう設計されています。しかしながら、山がちな日本では勾配は避けられるものではなく、中にはさまざまな事情から、高速鉄道らしくない急勾配が設けられた路線もあります。
もっとも急な勾配があるのは、九州新幹線。その勾配は35パーミル(1000メートル進むと35メートル登るもの)で、角度にすると約2度となります。他の新幹線で設けられる標準的な勾配は12パーミル、角度にすると約0.69度なので、新幹線としてはかなりの急勾配です。
九州新幹線では、トンネルを減らすことで建設費を抑制することを目的に、15パーミル前後の勾配が多く設けられているのですが、35パーミル勾配は、地質上の理由から、やむなく設けられたのだとか。この急勾配に対応するため、九州新幹線を走る800系とN700系は、東海道・山陽新幹線用の車両(500系を除く)と異なり、すべての車両がモーターを搭載した設計となっています。
続いて急な勾配があるのは、北陸新幹線。その勾配は30パーミルで、在来線時代に難所として知られていた碓氷峠に近い区間を通る、安中榛名~軽井沢間に設けられています。峠にそのまま挑んでいた在来線と異なり、新幹線は北に大きく迂回しているのですが、それでもこの勾配を設けなければ、関東平野から軽井沢まで登ることはできませんでした。北陸新幹線では他にも、飯山~上越妙高間の飯山トンネルで、地質上の理由から、30パーミル勾配が設けられています。
30パーミルの勾配は、北陸新幹線のほか、西九州新幹線にも設けられています。また、現在延伸工事が進められている北海道新幹線でも、札幌駅付近などに30パーミル勾配が設けられる予定です。
ちなみに、海外ではさらに急な勾配を持つ高速鉄道も存在します。ドイツの高速鉄道「ICE」が走るケルン-ライン=マイン高速線では、最急勾配はなんと40パーミル。JRでもっとも急な勾配(飯田線の一部区間)と同じ数値です。
この40パーミルという勾配は、JR東海の山梨リニア実験線にも存在しています。この実験線は、現在は営業路線ではありませんが、将来はリニア中央新幹線の一部となる予定。鉄輪式鉄道ではありませんが、新幹線では最も急な勾配となる見込みです。