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「人工頭脳電車」の末裔に見えてきた終着駅 能勢電鉄1700系、いよいよ最後の花道へ

2024年12月7日(土) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

2024年10月下旬、能勢電鉄は、同社の最古参車両である1700系の撮影会を実施すると発表しました。そして、その発表の中には、以下のような文言が。

「1700系は2026年春ごろ営業運転終了予定です」

2015年以降、5100系や7200系などの導入により、車両の世代交代が進められていた能勢電鉄。その中でも1700系は長く生き残ってきましたが、いよいよ終着駅が見えてきたようです。

2026年春ごろの引退が告知された能勢電鉄1700系。もとは阪急の初代2000系で、デビュー当時は「人工頭脳電車」などともてはやされました
2026年春ごろの引退が告知された能勢電鉄1700系。もとは阪急の初代2000系で、デビュー当時は「人工頭脳電車」などともてはやされました

1700系は、阪急電鉄の(初代)2000系の中古車両。2000系は1960年にデビューした神戸線向けの車両で、2025年で65歳を迎えます。この車両の大きな特徴は、回生ブレーキと定速運転制御を導入していたことです。

回生ブレーキは、「電車の自家発電」とも呼べるブレーキ方式の一種。モーターを発電機として動作させることで、電車が動く力(運動エネルギー)を電気に変換し、ブレーキをかける仕組みです。このとき得られた電気は架線に戻し、ほかの列車が走るための電気となります。定速運転制御は、運転者が指定した速度を保ったまま、車両を走らせる機能のこと。速度の指定は、ボタンやマスコンハンドルの操作で、簡単にできます。当時、これらの機能は画期的なものであり、2000系は「オートカー」「人工頭脳電車」などと呼ばれました。これらが評価された同形式は、同じ機構を備える京都線用の2300系とともに、鉄道友の会から第1回「ローレル賞」が贈られました。

その後、神戸線・宝塚線の架線電圧昇圧にともない、2000系の回生ブレーキ、定速制御は撤去されました。1990年に能勢電鉄への譲渡が始まり、1700系として4両編成9本が入線。同社の最多数を占める主力車両として、長らく運用されてきました。一時は乗客増に対応すべく、6両編成で運用されたこともあったそうです。

阪急時代から数えて60年以上、車体の塗装面が鏡のように反射するほどの美しい姿を保ち続けてきた1700系。しかし、時間の流れは残酷なもので、近年は後継車両の導入により、廃車が進んでいます。2024年12月時点では1755編成と1757編成の2本が残っていますが、前述のとおり、これらも2026年春ごろまでに引退の予定です。

2016年に引退した僚友の1500系と顔を合わせる1700系。ラッピング電車「里山便」の姿も、いまは昔
2016年に引退した僚友の1500系と顔を合わせる1700系。ラッピング電車「里山便」の姿も、いまは昔

2024年11月下旬、1757編成が重要部検査を受けて出場。これが1700系にとって、最後の大規模検査となるようです。現在、残った2本の1700系には、「レジェンド1700系」などのヘッドマークを期間限定で掲出中。還暦を超えた「人工頭脳電車」の末裔が、見えてきた終着駅に向けて、最後の花道へ走り出します。

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