ホームにいる列車の行先を見て、「目的地の手前の駅止まりか……」とガッカリしたことはないでしょうか。SNSで時折、そのような行先の事例が話題に上がるのを見ると、こうした経験を持つ人が多いことを、筆者も実感させられます。
その話題において、よく引き合いに出されるのが、大阪メトロ御堂筋線の「中津行き」。中津駅は、大阪随一のターミナル、梅田駅の北隣にある駅。中津行きは大阪市南側のターミナルである天王寺方面から北へ向かう形で運転されており、梅田駅は中津行きも通りますが、その先にある新大阪駅にはあと2駅のところで届かず。そんな事情からか、「せめて新大阪まで行ってほしい」という声が聞かれるのです。

人々を落胆させる(?)中津行きですが、なぜ設定されているのか。その理由を大阪メトロに聞きました。
同社の広報担当者によると、中津行きを設定する背景には、「輸送需要に見合った輸送力の確保がある」といいます。御堂筋線は市内中心部(梅田~天王寺間)の利用者が多く、この区間の輸送力を確保する必要があります。そこで、箕面萱野~江坂~なかもず間の系統を基本に、折り返し設備のある駅を利用して新大阪・中津~天王寺間の系統を追加。これにより、中心部の運転本数を確保しているのです。なお、中津駅の折り返し設備は、1964年の梅田~新大阪間延伸開業時、中心部の需要に対応すべく設けたという記録が大阪メトロに残っているそうです。
ところで、中津行きの運転本数は、ダイヤ改正のたびに減っています。過去の時刻表(平日ダイヤ)を見ると、1995年12月改正時点では、天王寺駅を16時以降に出る市内中心部の区間系統は、すべて中津行きでした。しかし、2006年3月の改正では夕方の中津行きの一部が新大阪行きに変わり、とくに天王寺駅19時頃から21時すぎまで、区間列車はすべて新大阪行きとなっています。さらに、2018年3月の改正で、21時台までだった新大阪行きの運転時間を約1時間延長。そして2025年1月改正の現行ダイヤでは、新大阪行きが23時台まで走っています。この運転形態の変化について、広報担当者は「利便性の向上と梅田駅以北の混雑率を考慮し、中津行きを可能な限り新大阪行きに延長している」と説明。増加した新大阪行きは、「利用者のガッカリを減らす」大阪メトロの努力の賜物とも言えそうです。

最後に余談をひとつ。御堂筋線の南側の終端はなかもず駅ですが、その1駅前で終わる「新金岡行き」が数本あります。これは、車両を新金岡~なかもず間の車庫に入れるために設定されているもの。いっそ、全列車がなかもず駅まで行ってほしいところですが、広報担当者いわく、「それでは同駅で十分な折り返し時間を確保できず、ダイヤが乱れる原因になるため、あえて一部の列車を新金岡行きとしている」のだそうです。