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改正のテーマは「混雑平準化」「詰まりの解消」か 阪急神戸線、新たなダイヤから見えてくる「努力」とは

2025年2月22日(土) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

2月22日に神戸・宝塚線でダイヤ改正を実施する阪急電鉄。神戸線では新たな種別「快速」の登場で話題ですが、筆者はその背景に、「朝ラッシュ時の各列車の混雑を平準化する」「夕ラッシュ時の列車の詰まりを解消する」の2つの目的があるように感じました。

スムーズなラッシュ輸送は都市の鉄道の長年の課題でもあります。今回は、阪急電鉄がどのように課題を克服しようとしているのかについて、考察します。

まもなく阪急神戸線に新種別登場!その名は「快速」(写真は、かつて京都線で運転されていたものです)
まもなく阪急神戸線に新種別登場!その名は「快速」(写真は、かつて京都線で運転されていたものです)

短くなる通勤特急を、ほかの種別でカバー 朝ラッシュ時の上りの運転形態は

現在、平日ダイヤの朝ラッシュ時間帯では、神戸方面からの準速達列車として通勤急行が運転されています。この列車は塚口駅まで各駅に停まり、六甲駅と西宮北口駅で特急または通勤特急を退避します。今回の改正では、通勤急行を快速に置き換えたほか、西宮北口駅での退避を廃止。快速は六甲駅で通勤特急に追い抜かれた後、終点の大阪梅田駅まで先着します。これにより、神戸、芦屋市内の通勤特急通過駅から大阪梅田駅までの所要時間が、最大で7分程度短くなります。

また、西宮北口駅以東では、これまで特急の後ろを走っていた準急(宝塚駅始発)が、通勤特急の前を走るかたちに変わります。これにより、一部の各駅停車が塚口駅で後続の準急に連絡。武庫之荘~十三・大阪梅田間の所要時間をわずかに短縮しています。

こうした変更の背景にあるのは、通勤特急の10両運転の廃止でしょう。編成を短くする分、ほかの列車で乗客を受け入れ、列車ごとの混雑率を平準化する狙いがあると思われます。なお、快速は塚口駅を通過しますが、代わりに同駅通過の特急がなくなった(塚口駅停車の通勤特急に変更)ため、塚口駅の停車本数は従前と変わりません。

改正後の朝ラッシュの運転形態のイメージ図。武庫之荘~十三・大阪梅田間の利用への配慮が印象的です
改正後の朝ラッシュの運転形態のイメージ図。武庫之荘~十三・大阪梅田間の利用への配慮が印象的です
ダイヤ改正前の神戸線上りのダイヤグラム(左)と、改正後のダイヤグラム(右)。種別が整理され、運転パターンも変更されています(ダイヤグラム作成ソフト「Oudia」で作成)
ダイヤ改正前の神戸線上りのダイヤグラム(左)と、改正後のダイヤグラム(右)。種別が整理され、運転パターンも変更されています(ダイヤグラム作成ソフト「Oudia」で作成)

停車駅を振り分けて「詰まり」を予防 夕ラッシュ時下りの運転形態

続いて夕ラッシュ時を見てみましょう。現在、大阪梅田→西宮北口間における下り列車は、10分間隔で「特急→各駅停車→通勤急行」のサイクルです。各駅停車は西宮北口駅どまりで、全区間先着。通勤急行は西宮北口駅まで先着し、同駅で特急を待ちます。このダイヤでは、通勤急行が塚口駅、武庫之荘駅にとまるため、後ろから特急が迫ってきます。また、西宮北口駅では、同駅終点の各駅停車がホームを離れた後、同じホームに特急が入ります。各駅停車が乗客を降ろすのに手間取れば、後続の特急に影響します。この「二重の詰まり」を、改正後のダイヤで改善しているのです。

具体的には、通勤急行を塚口駅通過の快速に、特急を塚口駅停車の準特急に変更。各駅停車は、後続の快速と準特急を園田駅で退避、としています。これにより、前の列車に近づく可能性を極力排除しているのです。

阪急神戸線の夕ラッシュ時における、改正前と改正後の比較(イメージ図)。種別や運転順序を変え、「詰まり」を出にくくしています
阪急神戸線の夕ラッシュ時における、改正前と改正後の比較(イメージ図)。種別や運転順序を変え、「詰まり」を出にくくしています

運転順序の変更や停車駅を各種別に振り分けることで、各駅の停車本数(利便性)を維持しつつ、混雑の平準化や「詰まり」をなくす配慮が見られます。新種別が仲間入りする神戸線。ラッシュ時の利便性の向上に、期待がかかります。

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