鉄道車両の冷房装置はかつてはぜいたく品で、特急型車両などの上級車両にしか搭載されていませんでしたが、1980年ごろからは一般列車にも広く普及。現在は、北海道のローカル線や地方私鉄といった例を除くと、ほとんどが冷房付き車両となっています。
しかしながら、冷房装置が当たり前に普及した現代でも、非冷房の車両のみが運転されている路線が、首都圏にあります。千葉県の山万ユーカリが丘線です。
山万ユーカリが丘線は、不動産会社である山万が、ニュータウンの開発にあわせて開発地域の交通を確保すべく建設した路線。形態としては新交通システムですが、ゆりかもめやポートライナーとは異なる「VONA」というシステムを、現在では日本で唯一運行している路線としても特徴的です。
山万の車両は、開業時の1982年から翌1983年にかけて導入された車両が3本。いずれも非冷房車で、夏場には側面の窓を開けて走る姿が見られます。他社では冷房の追設工事を実施した車両もありますが、山万においては、車両のサイズや重量の問題から、冷房装置を設置することは難しい様子。そのため、冷房装置が当たり前の現代でも、首都圏では珍しい非冷房車として活躍しています。
とはいえ、利用者へのサービスレベルが低下している状況は放置できません。そこで山万では、駅や車内でおしぼりとうちわを毎年夏に配布。期間中は「おしぼり電車」として、車両の前面にヘッドマークを掲出しています。
山万の夏の風物詩となった「おしぼり電車」。今年は7月1日から9月30日まで実施されています。