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作家・太宰治が愛した三鷹の跨線橋、撤去されることに

2021年9月19日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

中央線の三鷹車両センターに架かる鉄橋「三鷹跨線人道橋」が、まもなくその役目を終えようとしています。

撤去の方針が決定した「三鷹跨線人道橋」
撤去の方針が決定した「三鷹跨線人道橋」

このこ線橋は、1929年に車両基地が開設された際に建設されたもの。古レールを再利用して架けられたこの橋は、現代の視点では華奢な印象を受けます。実際、すでに建設から90年以上が経過し、現代の耐震基準を満たしていないことから、耐震補強か撤去かの二択が検討されてきました。

こ線橋を管理するJR東日本では、実質的に鉄道施設ではなく道路のような公共施設となっているとして、三鷹市に無償譲渡を申し入れていました。一方の三鷹市では、譲受した後の管理費用の問題があり、これを断念。これを受けたJR東日本では、費用の問題や、耐震補強した場合には文化的価値が損なわれる可能性が高いことから、撤去することを決定しました。

「三鷹跨線人道橋」は、「走れメロス」や「富嶽百景」などで知られる作家、太宰治が愛したことでも知られています。1939年から、玉川上水に身を投げた1948年まで、三鷹に住んでいた太宰。いわゆる太宰作品の「中期」「後期」にあたる時期で、この頃に「走れメロス」や「斜陽」、「人間失格」などが執筆されました。

太宰は、友人を誘って連れてくるほど、このこ線橋がお気に入りだったとのこと。また、彼の作品「東京八景」には、三鷹で見た「武蔵野の夕陽」を、「東京八景」の一つに数えてもいいだろう、という下りがあります。ひょっとすると、太宰の心を震わせ、あるいは友を救うために走るメロスを搔き立てた夕陽は、この跨線橋から眺めた景色だったのかもしれません。

橋から見た三鷹車両センター。太宰はこの橋から夕陽を眺めていたのかもしれません
橋から見た三鷹車両センター。太宰はこの橋から夕陽を眺めていたのかもしれません
 

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