9月30日をもって閉館する「京急油壺マリンパーク」。京急グループが運営する水族館で、三浦半島の観光資源として1968年に開業しましたが、老朽化のために惜しまれつつも閉館することとなりました。
この施設のある油壺地区や、さらに南の三崎漁港、城ヶ島といったエリアは、鉄道は通っておらず、公共交通機関はバスのみです。しかし過去には、京急久里浜線をこのエリアへ延伸する計画がありました。
三浦半島南部の鉄道路線は、もともとは京急の前身の一つである湘南電気鉄道により計画されていました。戦時中には久里浜までの区間が軍事需要を見込んで開業しましたが、戦後は観光需要を見込んで延伸。1966年には三浦海岸駅まで、1975年には現在の終点である三崎口駅まで開業しました。
さらに南へと延伸を計画していた京急ですが、油壺地区の開発抑制策や自然保護といった問題のために計画は遅延。2005年には、三崎口~油壺間の鉄道事業廃止届を提出しました。この時点では延伸を完全に諦めたものではありませんでしたが、最終的には2016年に延伸計画の凍結が決定されました。
かつて、京成押上線の八広駅に設置されていた反転フラップ式発車標には、建設前であるはずの「油壺」という行先が既に用意されており、京急線の延伸に備えていました。しかし結局延伸計画は凍結され、この発車標も現在は置き換えられたため、今は見ることができません。
なお、閉館する油壺マリンパークの跡地には、今後は高級宿泊施設が建設される予定。水族館経営からは撤退する京急ですが、三浦半島における観光投資を諦めたわけではありません。鉄道の延伸どころか、現在は人口減少が進んでおり、神奈川県の市では唯一、消滅可能性都市として挙げられている三浦市。この三浦半島で事業を展開する京急では、地域全体の生き残りをかけ、アクセラレータプログラムの展開など、さまざまな観点から事業創出や需要拡大を狙っています。