大きな地震が発生した直後、被害状況についての報道で、「〇〇新幹線は停電のため運転見合わせ」といった内容が伝えられることがあります。「地震で停電するくらいヤワな設備でいいのか」と思われるかもしれませんが、この停電は、新幹線の安全のために不可欠なものなのです。
全国の新幹線では、「早期地震検知システム」を導入しています。これは一般向けの緊急地震速報と同様の検知方法で、小さくて伝達速度の速いP波を受信し、大きな地震だと判定した場合に、列車を停めるシステムです。このシステムが一定以上の震度を予測した場合には、変電所からの送電を自動的に停止。すると列車は自動的にブレーキが掛かり、主要動のS波が到達する前に、列車を減速、あるいは停止させることができます。
走行中の新幹線が地震によって脱線した事例は、2004年の新潟県中越地震、2011年の東北地方太平洋沖地震、2016年の熊本地震の3度。いずれも列車を停止させるシステムが作動したため、死傷者が発生する事態とはなりませんでした。中越地震で脱線した200系は、軌道から大きく逸脱してはいましたが、システムの作動によって被害を抑えられたとも言えます。
また近年では、停電時でも走行を可能とする非常用バッテリーを搭載した車両が登場しています。JR東海のN700Sでは、時速30キロ程度の速度で、東海道新幹線内にある全てのトンネルから脱出できる程度の距離を走行可能なバッテリーを搭載。停電により駅間で停止してしまった場合でも、安全な場所へ移動することができます。
地震発生時の新幹線の停電は、アナウンスを聞くと不安を覚えてしまいますが、決して設備が貧弱というわけではなく、高度なシステムによって支えられた新幹線の安全性を証明しています。