今日も多くの人々が行きかう、渋谷駅ハチ公口前のスクランブル交差点。少し前まで、この近くに電車が鎮座していたのをご存知でしょうか。
その車両は、東急電鉄初代5000系。1954年から製造され、当時の最新技術を多く採用したことで話題を集めました。車体のスタイルと色から、ついたあだ名は「アオガエル」。東急線からの引退後、多くが地方私鉄に売却され、第二の人生を歩むことになります。
1993年、長野県の上田電鉄で現役を引退した5001号車が、東急に里帰りのうえ保存されることになりました。最初は東急の車庫や車両メーカーで保存されていましたが、2006年に車体の短縮と床下機器の撤去を実施、観光案内所として渋谷駅前に設置されました。ハチ公の銅像とともに渋谷駅のシンボルとなり、ハロウィンの時期の仮装など、時々見せる「コスプレ姿」が、道行く人の目を楽しませていました。
しかし、同駅前の再開発により、5001号車は残念ながら撤去が決まりました。ですが、捨てる神あれば拾う神あり。なんと秋田県大館市の「秋田犬の里」が、施設の休憩所として引き取ることになったのです。これは、銅像になっている犬の「ハチ」が秋田犬で、渋谷区と大館市に縁があったことで実現したもの。移設ののち、2021年5月から一般公開されています。
ハチの縁で、新天地へ旅立ったアオガエル。はるか秋田の地から、いまも渋谷の街を見守っていることでしょう。