鉄道コム

鉄道コらム

特急でも快速でもない かつての長距離輸送の主役、急行列車の歴史

2021年12月30日(木) 鉄道コムスタッフ 野田坂秀陽

青森と札幌を結んでいた寝台車連結の「はまなす」、ボンネット型の489系で知られた「能登」、最後まで583系が活躍した「きたぐに」。近年は少数かつ変わった運用の多かった急行列車ですが、もともとは長距離列車の主役でした。

日本で最初に登場した急行は、1894年に山陽鉄道(当時)が神戸~広島間で運行を開始した、特別料金不要の速達列車でした。当時の各駅停車で12時間半かかるところを8時間56分と3時間半短縮しています。なお、現在の所要時間は新幹線利用で約1時間半、在来線のみで約6時間です。100年以上前にしては意外と速いでしょうか。

その後、通過駅の多い列車には「最急行」「最大急行」などの名が付けられました。有料化は1906年、新橋~神戸間の最急行が最初です。それ以降、国鉄では急行は有料列車として定着します。

明治時代のSL列車(イメージ)
明治時代のSL列車(イメージ)

急行列車の最盛期は大正~昭和初期です。当時の特急は東海道・山陽本線にしかなく、その他の路線では急行が最速達列車となりました。この間有名だったものには201・202列車(上野~青森間)、「さんべ」(米子~熊本間)などがあります。

そんな急行列車ですが、1964年の新幹線開通以降は、衰退の一途をたどりました。輸送需要が増加する中、速度の速い特急列車や新幹線を高頻度で運行することで、効率的に輸送量を増やす方針がとられたのです。気軽に乗れる「エル特急」の設定、山陽、東北、上越新幹線の開通、新幹線開通による余剰特急車両の発生により、急行列車は新幹線や特急に置き換えられたり、快速や普通列車に格下げされる現象が発生したのです。

そして2009年には、最後の昼行急行列車「つやま」が廃止。2016年には、最後の夜行急行、そして最後の定期急行列車であった「はまなす」が廃止され、定期急行列車は消滅してしまいました。

最後の定期急行列車「はまなす」
最後の定期急行列車「はまなす」

現在でも、JRの急行列車は臨時列車として運行されることがあります。例えば、JR東海の飯田線豊橋~飯田間を走る「飯田線秘境駅号」。同じ区間を走る特急「伊那路」が2時間半ほどで走破するところを、この急行列車は5時間40分かけてゆっくりと走ります。

JRでは、臨時列車として細々と残る急行列車ですが、今後も継続して運転されるのか、注目です。

 

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

高崎・盛岡に新型気動車

ハイブリッド気動車「HB-E300系」2025年度下期デビュー。八高線や釜石線などに投入。

画像

東武の車両「記録推奨度」

この車両、いつまで走る? 引退が危ぶまれる車両や、見た目が変わりそうな車両をご紹介。今回は東武編です。

画像

4000系が「機関車風」塗装に

「西武秩父線開通55周年記念車両」11日運転開始。4000系をE851形を模した塗装に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、高倍率ズーム・広角レンズ編です。

画像

京都鉄博に381系

12月12日~17日に特別展示。16日までは、一部で「スーパーくろしお」色ラッピングも実施。

画像

11月の鉄道イベント一覧

数百件の情報を掲載中。鉄道旅行や撮影の計画には、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。