多くの乗り物では、運転席や操縦席は、進行方向を向いて設置されています。前にしか進めない飛行機はもちろん、クルマや船、そして鉄道車両でも、その多くが運転時は前向きに座ることとなっています。
しかしながら、国鉄時代に設計されたDE10形ディーゼル機関車は、運転台が前ではなく横向きの設置。椅子も運転台に向かって設置されているので、運転士は横向きに運転することとなっています。DE10形は、なぜこのような向きに運転台を設置しているのでしょうか。
DE10形は、ローカル線での運転のほか、車両基地や貨物ヤードでの車両入換用として開発された車両です。入換時には頻繁に往復する必要があるので、通常の車両のように前後に運転台が設置されている場合には、運転士は前後の運転台を往復するか、窓から身を乗り出して後方監視をしつつ後退することとなります。このような不便を解消すべく、DE10形は運転台を横向きに設置。進行方向を変える際、運転士が体の向きを変えるだけで済むよう、効率化を図ったのです。
なお、横向きの運転姿勢とはいっても、運転席の椅子は回転するようになっているので、多少は体を前に向けることができます。しかしながら、ブレーキハンドルなどは固定式となっているため、長時間の運転となると運転士には辛そうでもあります。
このような入換作業に最適化された運転台の設計は、DE10形のほか、兄弟車であるDE11形なども踏襲。JR貨物が導入した、ハイブリッド式機関車のHD300形、電気式ディーゼル機関車のDD200形にも受け継がれています。