鉄道車両の速度を制御するための、クルマのアクセルに相当する装置は「主幹制御器」。「マスターコントローラー」、略して「マスコン」と呼ばれています。一般的な電車では、マスコンとブレーキが別々の「ツーハンドル」、両者が一体の「ワンハンドル」の2つの方式があり、近年はワンハンドルが主流となっています。
ワンハンドルマスコンは、ハンドルを前後に動かす方式となっていますが、日本では奥に倒すとブレーキ、手前に倒すと加速となっています。これは、加速時には慣性によって体が後ろに引っ張られ、減速時には同じく前に倒れるのにあわせたもの。また、万が一運転士が気絶した場合でも、体が倒れる前(奥)方向をブレーキとすることで、異常時に備えたといわれています。
日本で現代の形のワンハンドルマスコンを本格的に採用したのは、1969年デビューの東急8000系。以降、他社の車両もふくめて、ワンハンドルマスコンは全てこの向きに動かす設計となっています。
一方、場所が変われば慣習も変わります。欧米で日本のように前後に動かすワンハンドルマスコンを装備している車両は、奥に倒すと加速、手前に引くとブレーキという、日本とは逆方向の設計。これは、前に倒すと前に進むというように、進行方向と動作を合わせたほか、馬車から路面電車へと進化した歴史を踏まえ、馬の手綱を引くとブレーキという動作に合わせたともいわれています。
海外ではこのほか、クルマのハンドルのような円形のワンハンドルマスコンや、前後ではなく左右に回す「シネストンコントローラー」といったものも。目的は同じ装備でも、文化や慣習によって面白い違いが生まれています。