鉄道車両は、営業列車が走らない夜間になると、車庫へと帰るのが基本です。運用上の都合や車庫の容量といった理由で駅や留置線で夜を明かすこともありますし、直通運転を実施している路線網では、直通先の他社の駅や車庫で眠ることもありますが、それでも数日に一度は自社の車庫へと帰る機会があります。
しかし中には、所属する会社の車両基地へずっと帰ることができない車両も。なぜなのでしょうか。
寝台特急「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」で使われる285系は、JR西日本が3本、JR東海が2本を保有し、いずれも共通で使われています。JR東海所属の2本は同社の大垣車両区への配置となっていますが、これは書類上の話。実際には、JR西日本の後藤総合車両所出雲支所に、同社所属の3本とともに常駐しています。
特急「スーパーはくと」で活躍する智頭急行のHOT7000系も、285系同様にJR西日本に検査が受託されています。こちらは鳥取鉄道部西鳥取車両支部に常駐。智頭急行線の大原駅横にある大原車両基地へは、普段は入線することがありません。
これらが書類上の所属基地へ帰ることがないのは、運用の効率を上げるため。保有数が少ない車両を、検査のたびに普段の運用ループから離れた車両基地へ回送するのは、運用面でも作業面でも効率が悪くなります。285系の場合では、上り「出雲」→下り「瀬戸」→上り「瀬戸」→下り「出雲」という運用でループしており、検査も後藤総合車両所で施工。そのため、普段は所属する車両基地へ入線する機会がないのです。そのため、あえて他社へ検査を委託することで、これらの手間を減らしているのです。