梅雨の時季を彩る花として有名なアジサイ。箱根登山鉄道では、線路脇に多くのアジサイが植えられており、「アジサイ電車」の名前でも親しまれています。
しかし、このアジサイ、もともと箱根にあったわけではなく、同社の社員さんが植え、育ててきたものだそうです。その目的は、観光客の目を楽しませるため……だけではないのだとか。
アジサイの大きな役割は、「土どめ」。箱根登山鉄道の線路は急勾配や盛り土の上に敷かれていることが多く、雨による土砂崩れの危険性が高まります。そこで、根を横に広く張る性質のアジサイを植え、線路際の土砂流出を、張り巡らされた根でガードするという対策が考えられたのです。現在は乗客を楽しませる役割も持つようになり、シーズン前には社員総出でアジサイの手入れをしているそうです。
ところ変わって、東京都内の京王井の頭線。こちらもアジサイが線路脇を彩っていますが、その目的は同じく土どめ。同線は渋谷駅から吉祥寺駅に向けて上り坂が続いており、線路やその周辺の斜面から土砂が流れることを防ぐため、アジサイが多く植えられたのです。このほか、ツツジやサザンカも見られ、季節別に花を楽しめるようにもなっています。
初夏の到来を告げ、車窓を美しく飾るアジサイ。その根には、線路を守るという大切な使命が託されています。咲き誇る花の美しさだけでなく、目に見えぬ力強さも、アジサイの魅力なのかもしれませんね。