電車の警笛といえば空気笛や電子的な音が一般的ですが、一部の鉄道車両では、音楽を奏でる警笛「ミュージックホーン」を装備しています。
日本で初めてミュージックホーンを装備したのは、1957年にデビューした、小田急電鉄の初代ロマンスカーと呼ばれる3000形「SE」。当時はまだ遮断機の無い踏切が残っていた中で、高速運転するロマンスカーの接近を遠方から気付けるように、また騒音公害を発生させない警報音として、エンドレステープを連続再生する方式でミュージックホーンが搭載されました。
続いて、1961年には名古屋鉄道の7000系「パノラマカー」が、ミュージックホーンを搭載して登場。こちらは録音テープを使用したSEと異なり、トランジスタを採用して「生演奏」する形となりました。小田急、名鉄とも、現在ではミュージックホーンは伝統の一つとなっています。
さらに1990年代以降は、半導体技術の進歩によって、搭載車両が増加。JR東日本の特急車両や、京成電鉄の「スカイライナー」といった各社の看板車両のほか、JR西日本の普通列車用も含む電車各形式、さらにはつくばエクスプレスやしなの鉄道SR1系など、一般列車用車両や地方私鉄へも広まっていきました。
列車の存在を知らせ、それでも一般的な警笛と異なり威圧感を与えないミュージックホーンは、どこでも確実に聞けるものではありませんが、鉄道の旅を音で彩ってくれる存在となっています。