鉄道車両には、路線区分や個性の強調などを目的に、様々な色が施されています。なかには長い歴史をもつものもありますが、とくに人気が高いものに「湘南色」が挙げられます。
湘南色は1950年、東海道線の東京~熱海間などを走る80系電車に施されたのがはじまりです。当時、国鉄の電車は茶色一色が多く、オレンジと緑という明るめの配色は話題を集めたのだとか。その走ったエリアから「湘南色」、「湘南電車」などと呼ばれ、東海道線首都圏エリアのシンボルに君臨。別の路線や地域にも波及しました。ちなみに、この色の組み合わせは、アメリカのグレート・ノーザン鉄道の配色、東海道線沿線のミカン畑を参考にしたなどの説があります。
1985年投入のステンレス車両211系にも、伝統の湘南色は車体帯として残り、長年の文化がすたれることはありませんでした。そして、現在も走るE231系やE233系にも受け継がれてはいますが、同形式では緑色の部分が明るめに変更されており、国鉄世代の車両とは少し印象が異なります。伝統の中にも時代の変化が見られるひとつの例です。
昔の湘南電車とは少し違う現在の色合いに、物足りなさを感じる方もいるでしょう。そんな声に応えたのか、品川駅構内の郵便ポストや藤沢駅の売店は、かつての湘南電車を模したものとなっています。この色が多くの人に親しまれていた証といえるでしょう。往年の思い出は、いまもまだ、そこにあるのです。