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中古品の登録有形文化財 箱根路を支える日本最古の鉄橋

2022年5月21日(土) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

急坂続く長いトンネルを抜けると、深い谷間の鉄橋であった。

トンネルを出ると同時に鉄橋へ飛び出す
トンネルを出ると同時に鉄橋へ飛び出す

ここは箱根登山鉄道の早川橋りょう。「出山の鉄橋」として観光客にもよく知られる、箱根の名所のひとつです。この鉄橋、2022年現在で134歳!鉄道用の橋としては日本一古く、また中古品であることをご存知でしょうか。

この鉄橋、1888年に国鉄の天竜川(静岡県浜松市)に架けられたものの一部です。当時、第一次世界大戦による物資不足で新品を用意できず、やむなく払い下げを受けました。このとき、神奈川県知事から「箱根の地に中古品の鉄橋を使うのか」と苦情が入ったものの、後日新品の鉄橋に交換することを条件に、工事の許可がおりたのだそうです。架橋工事の資料は1枚の写真が残るのみで、川面から大量の丸太を組んで足場を作ったこと以外、その内容は現在も謎に包まれています。

架橋ののち、1919年に登山鉄道が開通。以来、幾度もの災害に耐え、時代を越えて箱根の交通を支え続けています。架け替えの話は、いつしか立ち消えになったようです。その後、1990年度には「かながわの橋100選」に、1999年6月には国による登録有形文化財に指定されました。

早川橋りょう(出山の鉄橋)遠景(奥にかかる緑色の鉄橋)
早川橋りょう(出山の鉄橋)遠景(奥にかかる緑色の鉄橋)

物資不足の影響で、仕方なく導入した中古品の早川橋りょう。いつしか、国が認めるほどの財産にまで成長しました。その称号を誇りに、箱根をゆく電車たちを支え、見送っています。今日も、そして、これからも。

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