列車が走っているとき、運転席で動く「速度計」を見て、現在のスピードを確認する人も多いことでしょう。が、昔の車両を中心に、その速度計がついていない車両があることは知っていますか?
こんなことを聞くと、「列車のスピードがわからず、危険だったに違いない」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。その理由は、「運転士が列車を走らせるとき、速度計はほとんど見ないから」。
運転士は、一人前を目指す練習のとき(「教習期間」といいます)、速度計を見なくても、現在のスピードを正確に感じられるよう、訓練が繰り返されています。これは、速度計を見ると、常に進んでいる前方の風景から目が離れてしまうため。安全をしっかり確認して走るため、速度計をなるべく見ないことが求められるのです。運転士にとって速度計は、あくまで補助的なものという扱いです。
一方、昔の車両にも必ずあるのが、「圧力計」。これは、ブレーキや扉の開閉に使う空気の量を示すもので、目に見えない空気を扱うことから、昔からメーターが備えられています。
「もしも」のための備えはあるけど、頼らなくても問題ない。列車の運転士は、それほどの厳しい訓練を乗り越えた、いわゆる「職人」なのです。ずっと前を見ているあの姿こそが、じつは「プロの業」。それを当たり前にこなす、運転士という名の「職人」が、カッコよく見えてきませんか?