鉄道では、車両の冷房の作動とともに、その空気を全体に行きわたらせるための送風機を動かすことが多くなっています。最近の車両では、「ラインデリア」などと呼ばれる装置が冷房とともに装備され、その送風口が動くことで、冷気を広範囲に送っています。一方、古めの車両では、天井に扇風機を取りつけ、それを送風機としている車両もあります。
2022年5月現在、首都圏エリアの鉄道で扇風機を持つ車両は、東急8500系8631編成、京成・芝山鉄道3500形、京成3600形、江ノ島電鉄1000形の一部、小湊鉄道キハ200形など。新型車両との入れ替えも進み、見られる車両はかなり限られてきています。
冷房搭載車両が少なかった頃、非冷房車の多くでは、天井で扇風機がくるくると回っていました。車内の熱気をかき回すだけの存在が、やがて冷気の拡散に役目を変え、いま、その姿を徐々に消そうとしている状態です。車両そのものはもちろんですが、こうした設備面でも、世代交代は確実に進んでいるのです。
今年も気温が上がり、冷房が作動する日も増えてきました。わずかに残った扇風機の活躍も、あといかばかりか。最新機種より効きは悪いかもしれませんが、快適な車内環境づくりのため、懸命に回り続けた扇風機。この夏、そんな愛すべき風の戦士たちに、会いに行ってみませんか?