鉄道コム

鉄道コらム

スピードアップの裏に、隠れた制約 阪急神戸線、時速115キロの苦労話

2023年4月12日(水) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

関西を代表する都市である大阪と神戸を結ぶ、阪急神戸線。同線では昼間、優等列車の「特急」が運転されています。2006年10月、特急の最高速度は、これまでの時速110キロから時速115キロに引き上げられました。

7000系による阪急神戸線の「特急」
7000系による阪急神戸線の「特急」

スピードアップの背景には、ATS(自動列車停止装置)への機能追加があります。駅停車時のブレーキ操作の改良で、より高い信頼性と安全性の確保と、最高速度の引き上げに成功したのです。

これに合わせ、神戸線ではダイヤ改正を実施。昼間の特急のスピードアップとともに、特急と通勤特急が夙川駅にとまるようになりました。これは、翌春に開業を控える近隣駅(JRさくら夙川駅)への乗客流出防止が目的だとか。停車駅が増えたものの、スピードアップの恩恵もあり、昼間における梅田~三宮間の特急の所要時間はほぼ変わりませんでした。

スピードアップの対象を昼間の特急に絞ったのには、理由があります。ひとつが、車両運用。スピードアップに対応できるのは、7000系(1980年製)以降の車両のみ。当時は時速110キロが限度の3000系(1964年製)や5000系(1968年製)なども本線の主力で、時速115キロを出せる車両が限られていたのです。もうひとつが、ラッシュ時の運転本数の多さ。前の列車に追いつきやすく、速達効果が薄いと判断されました。ほんの少しのスピードアップでも、その裏には意外な苦労があったのです。

スピードアップ未対応だった3000系。同車の晩年、特急運用はラッシュ時のみに見られました
スピードアップ未対応だった3000系。同車の晩年、特急運用はラッシュ時のみに見られました

時速115キロで走る特急は「A特急」とされ、列車番号上で区画がつけられました(車両や駅の表示は「特急」のまま)。しかし、スピードアップ未対応の車両は次第に姿を消し、2020年2月、神戸線用の8両編成は7000系以降の車両で統一されました。これを機に、神戸線ではダイヤ改正を実施。A特急と特急を統合し、特急運用の車両の制約を解消しました。スピードアップの裏に隠された苦労が、ここでようやく落ち着いたといえるでしょう。

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

京成の新型車「3200形」詳細

実は「ギリギリ」な設計だった? 京成電鉄の新型車両「3200形」を深掘りします。

画像

西武山口線に新型車

4両編成3本を2025年度~2027年度に順次導入し、8500系を代替。デザインは各編成別。

画像

「T4編成」展示へ

1月で引退の「ドクターイエロー」T4編成、先頭車がリニア・鉄道館で保存へ。6月に展示開始予定。

画像

幻の東京圏「改良計画」とは?

1950年代の国鉄は、東京圏を今と違った形に改良する計画を持っていました。その中身とは?

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、標準~望遠・超望遠レンズ編です。

画像

1月の鉄道イベント一覧

2025年も鉄道コムをよろしくお願いします。1月の計画立案には、イベント情報をどうぞ。

画像

イベント投稿写真募集中!

鉄道コムでは、臨時列車や基地公開など、さまざまなイベントの投稿写真を募集中! 投稿写真一覧はこちら。