関西を代表する都市である大阪と神戸を結ぶ、阪急神戸線。同線では昼間、優等列車の「特急」が運転されています。2006年10月、特急の最高速度は、これまでの時速110キロから時速115キロに引き上げられました。
スピードアップの背景には、ATS(自動列車停止装置)への機能追加があります。駅停車時のブレーキ操作の改良で、より高い信頼性と安全性の確保と、最高速度の引き上げに成功したのです。
これに合わせ、神戸線ではダイヤ改正を実施。昼間の特急のスピードアップとともに、特急と通勤特急が夙川駅にとまるようになりました。これは、翌春に開業を控える近隣駅(JRさくら夙川駅)への乗客流出防止が目的だとか。停車駅が増えたものの、スピードアップの恩恵もあり、昼間における梅田~三宮間の特急の所要時間はほぼ変わりませんでした。
スピードアップの対象を昼間の特急に絞ったのには、理由があります。ひとつが、車両運用。スピードアップに対応できるのは、7000系(1980年製)以降の車両のみ。当時は時速110キロが限度の3000系(1964年製)や5000系(1968年製)なども本線の主力で、時速115キロを出せる車両が限られていたのです。もうひとつが、ラッシュ時の運転本数の多さ。前の列車に追いつきやすく、速達効果が薄いと判断されました。ほんの少しのスピードアップでも、その裏には意外な苦労があったのです。
時速115キロで走る特急は「A特急」とされ、列車番号上で区画がつけられました(車両や駅の表示は「特急」のまま)。しかし、スピードアップ未対応の車両は次第に姿を消し、2020年2月、神戸線用の8両編成は7000系以降の車両で統一されました。これを機に、神戸線ではダイヤ改正を実施。A特急と特急を統合し、特急運用の車両の制約を解消しました。スピードアップの裏に隠された苦労が、ここでようやく落ち着いたといえるでしょう。