2022年10月14日、日本の鉄道開業から150年を迎えました。多くの歴史を築いてきた日本の鉄道について、今回は開業のさらに前、鉄道が日本にやって来た時代を振り返ってみましょう。
世界で初めて、蒸気機関車を用いた公共鉄道がイギリスで開業したのは、1825年のこと。この時代、ヨーロッパでは産業革命の真っ只中で、鉄道の動力源としても用いられた蒸気機関の発明は画期的なことでした。一方、当時の日本は江戸時代後期で、江戸幕府第11代将軍の徳川家斉が治める時代。「異国船打払令」を発するなど、いわゆる「鎖国」政策を採っていた日本ですが、ヨーロッパを中心としたこの世界の大変革に、日本も飲み込まれていくことになります。
1853年7月(新暦)のペリー来航から約1か月後、長崎にロシア人のプチャーチンが来航します。プチャーチンはこの際、蒸気機関車の模型を持ち込み、日本で走らせました。レールの上を走る蒸気機関車は、模型ながらこれが日本初のこととなります。これを見た佐賀藩の田中久重(現在の東芝の前身の会社の創業者)は、日本初の蒸気機関車の模型を製作しています。翌1854年には、ペリーが大型の鉄道模型を持ち込み、こちらも国内で走行。1865年には、長崎でグラバー商会が蒸気機関車を走行させています。
新橋~横浜間開業から約3年前の1869年には、北海道の茅沼炭鉱で鉄道が敷設されました。とはいっても、こちらは炭鉱のトロッコで、重力と畜力を動力とした輸送用の路線と、現代の鉄道とは性格が異なるもの。しかし、現代の鉄道の役割の一つである貨物輸送は、既にこの頃から始まっていました。
このような前史がある中、1867年に実権を握った明治新政府は、欧米に追いつくべく急速な近代化を模索します。その一環として、1869年には東京~京阪神間を結ぶ鉄道建設を決定。その第一歩として、新橋~横浜間の鉄道建設が盛り込まれました。そして1872年の10月14日(新暦)、新橋~横浜間が開業し、本格的な日本の鉄道の歴史が始まったのです。