鉄道コム

鉄道コらム

廃止後も残って110年 住吉公園駅の思い出

2023年1月21日(土) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

大阪市住吉区に構え、「すみよっさん」の愛称で親しまれる、住吉大社。最寄り駅は南海本線の住吉大社駅、阪堺電気軌道の住吉鳥居前駅などですが、2016年初頭までは、アクセスに便利な駅がもうひとつありました。

それが、阪堺電気軌道の住吉公園駅。天王寺駅前駅から延びる上町線うえまちせんの終着駅で、住吉大社駅の高架横にありました。駅前の路地に溶け込むレトロな駅舎が特徴で、ホームには金魚が住む水槽があるなど、穏やかな雰囲気が漂っていました。

住吉公園駅の駅舎(2016年1月撮影)
住吉公園駅の駅舎(2016年1月撮影)

住吉公園駅は、上町線を隣の住吉駅から延ばすかたちで、1913年に開業しました。昭和30年代には約1分間隔で列車が発着するなどの賑わいを見せたそうですが、その後、利用者が減少に転じます。それでも2013年の時点では、昼間も12分間隔で列車が設定されていました。

転機となったのは、2014年3月のダイヤ改正。利用者が多い別の区間を増発する一方、利用者の少ない住吉公園駅の発着を朝ラッシュ時の数本のみに削減したのです。それでも営業は続けられましたが、ここで、数億円と試算された駅周辺の線路の改修費用が問題になりました。

慢性的な赤字に悩む阪堺電気軌道。極端に本数の少ない区間に、多額の投資をする余裕はなかったのでしょう。2015年8月、阪堺は住吉公園~住吉間の廃止を決定。2016年1月31日に廃止となりました。最末期は、古参のモ161形に記念のヘッドマークを掲出したほか、普段は住吉公園駅に入らないモ1001形「堺トラム」が臨時の貸切列車で入線するなど、注目を集めました。

廃止後、線路跡は道路や駐車場などに転用されました。ただし、駅舎は残っており、そのレトロな佇まいを、開業から110年が経った現在も見ることができます。なお、ホームの水槽にいた金魚は市内の中学校に引っ越し、新たな生活の場を手に入れたようです。

旧・住吉公園駅を発車する電車。現在、この廃線跡は駐車場などに生まれ変わりました
旧・住吉公園駅を発車する電車。現在、この廃線跡は駐車場などに生まれ変わりました
 

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

高崎・盛岡に新型気動車

ハイブリッド気動車「HB-E300系」2025年度下期デビュー。八高線や釜石線などに投入。

画像

東武の車両「記録推奨度」

この車両、いつまで走る? 引退が危ぶまれる車両や、見た目が変わりそうな車両をご紹介。今回は東武編です。

画像

4000系が「機関車風」塗装に

「西武秩父線開通55周年記念車両」11日運転開始。4000系をE851形を模した塗装に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、高倍率ズーム・広角レンズ編です。

画像

京都鉄博に381系

12月12日~17日に特別展示。16日までは、一部で「スーパーくろしお」色ラッピングも実施。

画像

11月の鉄道イベント一覧

数百件の情報を掲載中。鉄道旅行や撮影の計画には、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。