鉄道に詳しくない人でも、JRや大手私鉄の名前は知名度が高いはず。地方私鉄の名前も、地元の人なら知っている人が多くいます。では、関西エリアの鉄道事業者、「大阪外環状鉄道」や「西大阪高速鉄道」、「関西高速鉄道」という会社はご存じでしょうか?鉄道好きでも知らない人がいそうな、まさに「謎」の鉄道会社です。
鉄道事業は、第一種~第三種の3つに区分されます。JRの山手線や大阪環状線のように、自社で線路を保有し、自社で列車を運行する場合は、第一種鉄道事業。JR貨物のように、他の事業者が保有する線路に列車を走らせる場合は、第二種鉄道事業です。そして、自社では列車を運行せず、第二種鉄道事業者に線路を貸しているのが、第三種鉄道事業となります。
先に挙げた3社は、第三種鉄道事業者に区分される会社。大阪外環状鉄道はJR西日本のおおさか東線、西大阪高速鉄道は阪神なんば線の西九条~大阪難波間、関西高速鉄道はJR西日本のJR東西線で、それぞれ運行事業者に線路を貸し付けているのです。
このような線路を貸し付ける会社が生まれる理由は、鉄道路線を建設するための費用の問題があります。
新路線を建設するには莫大な費用が必要ですが、鉄道運行を担う事業者だけが負担できる額には限度があります。そこで、鉄道事業者や自治体が出資する第三種鉄道事業者を設立して新線を建設し、開業後は第二種鉄道事業者に貸し付けることで、建設費用調達を容易にするスキームが採られています。
近年では、地方路線の経営改善策として、この第三種鉄道事業の方法が採用されることもあります。たとえば、青森県を走る青い森鉄道では、線路を青森県が保有。青い森鉄道は青森県に線路の使用料を支払い、青森県は線路の維持費用を負担することで、青い森鉄道の費用負担を抑えています。
また、2011年の豪雨で一部区間が被災し、2022年にようやく全線再開にこぎ着けた只見線では、不通区間の復旧に際し、JR東日本が線路を福島県へ譲渡しています。このような、線路の保有事業者と列車の運行事業者が分離している方式は、「上下分離方式」と呼ばれています。