鉄道コム

鉄道コらム

年末年始の風物詩の歴史は長く 大晦日の終夜運転

2022年12月30日(金) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

2022年も残りわずか。迫る年の瀬に、時の流れの速さを実感させられます。

さて、鉄道では、年末年始の風物詩のひとつに「終夜運転」があります。初詣客などの輸送を目的に、12月31日(大晦日)深夜~1月1日(元日)早朝にかけて列車を一晩中走らせることですが、今回はその歴史を、少し覗いてみましょう。

冬の深夜をひたすら走る電車(イメージ)
冬の深夜をひたすら走る電車(イメージ)

正月の初詣で、自宅から離れた遠方の寺社にも行くことが増えたのは、明治時代中期と言われています。その背景には、遠方への手軽なアクセスを実現させた鉄道の存在が大きかったのだとか。1892年には、川崎大師(神奈川県)へのアクセスとして、現在のJR東海道本線で元日早朝に臨時列車が走ったという記録があります。また、参詣目的の終夜運転は正月に限らず、1905年10月にも実施されています。これは、池上本門寺(東京都)での「御会式おえしき」にあわせたもの。以降、戦前は京浜電気鉄道(現在の京急線)などで「秋の終夜運転」が見られました。

なお、それより前の1903年、東京の馬車鉄道で元日未明に終夜運転が行われています。これは、いわゆる「ツケ」で商品を買った人から代金を回収する商人の足の確保という目的もあったとか。当時の生活スタイルも、終夜運転に影響を与えていたようです。

大正末期には、国鉄でも年末年始の終夜運転を開始し、都市部を中心に広がりを見せたものの、太平洋戦争の勃発により運転を一時中止。戦後の混乱期を乗り越え、1952年に復活します。その後は毎年運転され、いつしか年末年始の恒例行事となって現代に至ります。

2020年の年末は、新型コロナウイルスの流行により、多くの事業者で終夜運転が中止されました。それから数年、再開に向かう事業者がある一方、東京メトロ、京急線など、沿線に有名な寺社を持つ事業者でも中止の動きが見られます。コロナ禍で確立しつつある「ニューノーマル」な生活は、長く続く終夜運転の歴史にどう影響するのでしょうか。各社の今後の対応に注目です。

2022年、JR東日本の終夜運転を行う路線の一覧(画像:JR東日本)
2022年、JR東日本の終夜運転を行う路線の一覧(画像:JR東日本)

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

関連鉄道コらム

鉄道コムおすすめ情報

画像

ラストランは2月10日

「青胴車」5001形は2月10日にラストラン。引退前の「乗車会」開催や、引退記念グッズ発売も。

画像

「T4編成」展示へ

1月で引退の「ドクターイエロー」T4編成、先頭車がリニア・鉄道館で保存へ。6月に展示開始予定。

画像

幻の東京圏「改良計画」とは?

1950年代の国鉄は、東京圏を今と違った形に改良する計画を持っていました。その中身とは?

画像

「サステナ車両」5月デビュー

元小田急の西武8000系が、車両基地を出場。デビューは2024年度末から2025年5月末に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、標準~望遠・超望遠レンズ編です。

画像

1月の鉄道イベント一覧

2025年も鉄道コムをよろしくお願いします。1月の計画立案には、イベント情報をどうぞ。

画像

イベント投稿写真募集中!

鉄道コムでは、臨時列車や基地公開など、さまざまなイベントの投稿写真を募集中! 投稿写真一覧はこちら。