2022年も残りわずか。迫る年の瀬に、時の流れの速さを実感させられます。
さて、鉄道では、年末年始の風物詩のひとつに「終夜運転」があります。初詣客などの輸送を目的に、12月31日(大晦日)深夜~1月1日(元日)早朝にかけて列車を一晩中走らせることですが、今回はその歴史を、少し覗いてみましょう。
正月の初詣で、自宅から離れた遠方の寺社にも行くことが増えたのは、明治時代中期と言われています。その背景には、遠方への手軽なアクセスを実現させた鉄道の存在が大きかったのだとか。1892年には、川崎大師(神奈川県)へのアクセスとして、現在のJR東海道本線で元日早朝に臨時列車が走ったという記録があります。また、参詣目的の終夜運転は正月に限らず、1905年10月にも実施されています。これは、池上本門寺(東京都)での「御会式」にあわせたもの。以降、戦前は京浜電気鉄道(現在の京急線)などで「秋の終夜運転」が見られました。
なお、それより前の1903年、東京の馬車鉄道で元日未明に終夜運転が行われています。これは、いわゆる「ツケ」で商品を買った人から代金を回収する商人の足の確保という目的もあったとか。当時の生活スタイルも、終夜運転に影響を与えていたようです。
大正末期には、国鉄でも年末年始の終夜運転を開始し、都市部を中心に広がりを見せたものの、太平洋戦争の勃発により運転を一時中止。戦後の混乱期を乗り越え、1952年に復活します。その後は毎年運転され、いつしか年末年始の恒例行事となって現代に至ります。
2020年の年末は、新型コロナウイルスの流行により、多くの事業者で終夜運転が中止されました。それから数年、再開に向かう事業者がある一方、東京メトロ、京急線など、沿線に有名な寺社を持つ事業者でも中止の動きが見られます。コロナ禍で確立しつつある「ニューノーマル」な生活は、長く続く終夜運転の歴史にどう影響するのでしょうか。各社の今後の対応に注目です。