東京の真ん中をぐるりとまわる、山手線。現在の車両では、乗客用の扉が1両に4か所ありますが、10号車(外回り列車の前から10両目)だけ、一部の扉の位置と窓の形などが、ほかの車両と違います。なぜ違うのか、その理由は、品川~東京~田端間を並んで走る京浜東北線と、各駅のホームドアが関係しています。
同じホームに扉の位置が大きく異なる車両が入ると、ホームドアは設置しづらくなります。山手線だけが走る区間は問題ないのですが、京浜東北線と一緒に走る区間は、事故や工事などでどちらかの線路が使えないとき、京浜東北線が山手線に乗り入れるなど、両線が線路を共有することがあります。そのため、一部の駅では、山手線と京浜東北線の両方の車両に対応できるホームドアが必要なのです。
山手線、京浜東北線とも、扉の数は1両に4か所。しかし、編成両数が異なること(山手線は11両、京浜東北線は10両)、運転席すぐ後ろの扉は車両の中央に寄っていることの2点が問題になりました。山手線の10号車(運転席なし)と京浜東北線の10号車(運転席あり)で、一部の扉の位置がズレるのです。そこで、山手線の10号車の扉の位置を調整。京浜東北線の10号車に近い仕様とし、ホームドアの設置に対応させました。
この「山手線の少し変わった10号車」は、2010年頃から導入されました。ちなみにその後、開く部分を大きくできるホームドアが開発され、扉の位置のズレは大きな問題にならなくなりました。この「少し変わった10号車」は、当時のホームドアの設計技術を物語る存在といえるでしょう。2023年1月現在、山手線のみで見ることができます。
ちなみに、少し変わった10号車が導入される前、この山手線の10号車(と7号車)には、乗り降りをスムーズにするため、扉を1両に6か所も設けた車両を連結していました。この「6扉車」は、混雑対策の切り札として、山手線のほか、京浜東北線、埼京線、総武・中央線各駅停車、横浜線、東急田園都市線などでも見られました。しかし、ホームドアに対応できない、乗客が減ったなどの理由もあり、現在はその姿を消しています。