ある会社の車両が別の会社に乗り入れる直通運転。一部の路線では、車両だけでなく、乗務員も他の会社へそのまま乗り入れ、業務を担当することがあります。
たとえば北陸新幹線です。JR東日本とJR西日本にまたがる北陸新幹線は、上越妙高駅が両社の境界。ですが、速達種別の「かがやき」は、同駅には停車しません。そのため、全ての列車が停車する長野駅が、両社乗務員の交代駅に。長野~上越妙高間は、JR東日本の路線でありながら、JR西日本の乗務員が基本的に担当しているのです。
このような乗務員の乗り入れは、「越境乗務」と呼ばれます。先に挙げた北陸新幹線のほか、小田急電鉄と箱根登山鉄道(小田原~箱根湯本間)、JR東海と伊勢鉄道(四日市~河原田~津間)、JR四国と土佐くろしお鉄道(若井~窪川間)など、そのほとんどが効率上の理由で実施されています。
現代ではほとんどが最小限の実施となっている越境乗務ですが、車掌の場合、かつては超広範囲での乗務行路もありました。国鉄時代、たとえば東京車掌区所属の車掌が寝台列車で九州まで乗務する、といった運用が組まれており、これが分割民営化後のJRにも引き継がれたのです。九州方面のブルートレインのように他社へ乗り入れる運用のほか、自社線完結ながら、上野~青森間の「あけぼの」を全区間担当する、といった地方をまたがる運用もありました。
しかし、寝台列車の減少によってこのような越境乗務も減少し、2015年に「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」の担当が会社ごとに分割され消滅。現在は、「TRAIN SUITE 四季島」のような特殊例を残すのみとなってしまいました。