さまざまな業界で合理化が叫ばれる現代、鉄道業界においても、列車の連結・切り離しの削減や、ワンマン運転の拡大といった取り組みが次々と進められています。そんな今の目線で見ると、ひと昔前の鉄道では、少し面白いことが日常的に行われていました。
快特の時速120キロ運転などでファンから人気が高い京浜急行電鉄では、かつてのダイヤで面白い列車を運転していました。今回ご紹介するのは、羽田空港駅発で浦賀駅または新逗子駅行きの列車。4両編成による運転で、羽田空港→京急蒲田→京急川崎間は単独の特急、京急川崎→金沢文庫間は品川~三崎口間の快特と連結しての12両、金沢文庫→浦賀または新逗子間は単独の普通と、種別が2度変わる列車でした。
特に興味深いのが、京急川崎駅の入線前に、引き上げ線で後続の快特を待避すること。京急蒲田駅を先に発車した特急ですが、待避線で3分程度停車し、京急蒲田駅を後に発車した快特の京急川崎駅到着を待ったうえで、この編成の後ろに連結していたのです。当時は2面3線だった京急蒲田駅の設備で多数の列車を捌きつつ、この列車を三崎口行きの8両編成の後ろに増結するために採られた方法でした。
この独特な列車は、列車番号の末尾が「D」であることから、ファンからは「D特」という愛称で親しまれていました。残念ながら、このアグレッシブな運用方法は、2010年5月の京急蒲田駅一部高架化によるダイヤ改正で消滅。現在運転されているエアポート急行に役目を譲り渡しました。