現役を引退した後、廃車体を再び整備して現役に復帰する鉄道車両は、いくつかの例があります。まさに敗者復活ならぬ「廃車復活」と言えますが、その多くは蒸気機関車です。しかし、15年前、路面電車でそれを果たした車両が存在します。
その車両は、京福電気鉄道(嵐電)の301号車。1971年に登場したモボ301形のトップナンバーで、嵐電初の全鋼製車両です。先輩にあたるモボ101形が、車体更新で本形式と同じスタイルに生まれ変わるなど、嵐電における鋼製車両の基礎を築きました。増備は2両にとどまりましたが、同社社内ではモボ101形とともに「マルダイ」の愛称で呼ばれ、冷房化や集電装置の交換などを経て近年に至ってきました。
ですが、老朽化は着実に進み、2007年、2両とも引退を迎えます。お別れイベントもなく、ひっそりとした幕引きでした。その後は営業線上に姿を現すこともなく、解体を待っていました。
しかし、翌2008年、流れが変わります。301号車が復活するというのです。これは、同年3月の京都市営地下鉄東西線の太秦天神川駅開業による、接続路線である嵐電の需要増大のため。使える車両を手早く増やし、輸送需要に応えることになったのです。また、鉄道ファンから復活の要望が出ていたことも、その後押しになったとか。
301号車は整備ののち、車番にちなんだ「3月01日」、記念イベントを開催。不死鳥のごとく現役に復帰しました(302号車はその後解体)。なお、301号車は京紫色に塗り替えられておらず、現在は旧塗装の姿で残る事実上唯一の車両となりました。
しかし2023年1月、嵐電は同年度以降に新型車両を導入すると発表。これにより、モボ101形とモボ301形が順次置き換えられるものと思われます。廃車復活の奇跡から、今年で15年。半世紀以上走り続けた不死鳥ですが、2度目の引退は近いのかもしれません。