東京の北の玄関口、上野駅には、東北新幹線や秋田新幹線、東北本線、上野東京ライン、山手線など、JRだけでも12路線(秋田新幹線や上野東京ラインなどは別路線としてカウント)が乗り入れています。ですが、正式な路線の名称としては、実は1路線ないし2路線しか乗り入れていないのです。
JR各社の前身となった国鉄では、路線名は「国有鉄道線路名称」によって定められていました。これによると、たとえば山手線の区間は、品川~新宿~田端間。環状路線ではありません。国鉄では、東京~神田間(東北本線・中央本線の重複、現在は解消)のような短距離の例を除き、大きい幹と、その途中駅から延びる枝線というイメージで、基本的には重複区間がないように路線の正式区間が定められていました。現在のJRでも、この考え方を引き継いで、各線の正式名称を設定しています。
上野駅の例に戻ると、高崎線の上野~大宮間、常磐線の上野~日暮里間、山手線の東京~田端間などは、全て正式には東北本線です。東北新幹線は、資料によって東北本線の一部であるか、あるいは東北新幹線という独立路線か分かれていますが、やはり同様に、上越新幹線は東京~大宮間は東北新幹線に乗り入れる形となっています。
とはいえ、正式路線名だけで案内すれば、利用者には不親切です。そこで、正式には山手線、東海道本線、東北本線にまたがって走る環状運転の列車は「山手線」と案内されますし、東海道本線と東北本線の各駅停車の列車は、路線名としては存在しない「京浜東北線」という愛称・系統名で案内されています。JR東日本においては、「湘南新宿ライン」や「上野東京ライン」といった、直通ネットワークに新たな愛称を付けて案内することもあります。
運行系統を愛称にする例は首都圏エリアが大多数ですが、たとえば札幌~白石間で函館本線を走る苫小牧方面の列車が「千歳線」と呼ばれるなど、利用者がわかりやすくするために、正式名称ではない内容で案内することは各地で見られます。