1月25日、東急8500系の8637編成が長津田車両工場に回送されました。これをもって8500系は、約48年にわたる東急線での歴史に幕を下ろすことになります。
8500系は、田園都市線・新玉川線(現・田園都市線の渋谷~二子玉川間)と地下鉄半蔵門線との直通運転に向け、当時の主力車両であった8000系をマイナーチェンジした車両です。性能は8000系と同等で、一時は混結運用もあったとか。ちなみに、先頭部に赤い帯を入れた東急の車両は、この8500系が初めてです。
製造期間は1975年~1991年の16年間にわたり、これは当時の東急の車両としてはロングセラーの部類です。全車両がステンレス製ですが、1981年以降の新造車両は「軽量ステンレス」車体となり、車体の断面が少し異なっています。
8500系は、最終的に10両編成38本、5両編成4本(10両編成2本に組成可能)の400両が製造され、おもに田園都市線、大井町線で運用されました。昭和から平成への過渡期は8500系の黄金期とも呼べる時期で、2000系(現:9020系)がデビューするまでの一時期、田園都市線を走る車両は、大井町線への直通列車を除くと、8500系と直通先の半蔵門線8000系だけということもありました。
2003年には東武線への直通も始まり、運用範囲をさらに広げますが、同年より廃車が始まります。2018年の時点では260両が残っていましたが、これらも2020系と入れ替わるように置き換えが進められました。最後まで残った8631編成と8637編成には、2022年4月下旬に引退記念のヘッドマークを掲出。その後、翌5月に8631編成が運用を離脱し、以降は8637編成の孤軍奮闘という状態が続いていました。この編成は沿線企業、施設などの広告ジャック車両として用いられることが多く、ほかの8500系とは異なる青い帯が大きな特徴でした。
8500系の引退で、コルゲートを持つ東急車が全廃されたとともに、東急の保有車両がすべてVVVFインバータ制御車になりました。その意味で、同車の引退は東急にとってひとつの節目ともいえるでしょう。現在、秩父鉄道、長野電鉄、そしてインドネシアのジャカルタでは、東急を引退した8500系が譲渡され、運用を続けています。これらの1日でも長い活躍を願い、結びとします。
東急線での長年の運用、お疲れさまでした。