一部の私鉄路線では、各駅停車と急行列車の中間に位置する種別として「準急」を運転しています。現代では私鉄の通勤電車の一つという印象が強い準急ですが、かつては国鉄でも運転されていたことがありました。それも、「ガタゴト揺れる満員電車」とは対極の、比較的長い距離を走る列車でした。
国鉄の準急は、戦前期と戦後期にそれぞれ運転されていました。ともに普通列車と急行列車の間の種別ですが、戦前のものは料金不要で、現代の快速に相当するもの。一方の戦後は、急行列車を補完する有料列車でした。
特急が文字通り「特別な急行」だった時代、庶民の長距離移動は急行列車が主役でした。長距離輸送をメインとした急行に対し、準急は急行よりも近距離の運転が中心でした。車両は急行より一段劣ったものが使用され、時には一般型が使用されることもありましたが、一方では153系のように、後に急行型として扱われるものも使われています。加えて、準急「日光」では特急用車両並の設備を備えた157系が投入されるなど、必ずしも急行未満というわけでもありませんでした。
急行を補完する立場となっていた準急ですが、1966年のダイヤ改正では、走行距離が100キロを超える列車は全て急行に格上げとなり、それまで急行料金と差別化されていた準急料金も統一。急行との違いは種別名のみとなりました。そして「ヨンサントオ」で知られる1968年のダイヤ改正で、準急は全て急行に統合され、国鉄からは消滅してしまいました。
国鉄を引き継いだJRでは現在でも準急は運転されていませんが、東京メトロ千代田線を介して常磐線各駅停車と相互直通運転を実施している小田急小田原線では、直通各社の車両による準急が運転されています。そのため、直通先の私鉄路線限定ではあるものの、現在でもJR車両による準急を見ることができます。