終電が走る頃の深夜の浅草線には、時折珍しい回送列車が走ることがあります。それも、ただの回送列車ではなく、マゼンタに塗られたナゾの車両が先頭で走る列車です。
この回送列車の正体は、大江戸線の車両が浅草線の車両基地で検査を受けるためのもの。先頭の車両は「E5000形」という電気機関車で、浅草線内は機関車が大江戸線車両をけん引して走行しています。
車両基地に向かう列車は、大江戸線の車両基地から汐留駅に向かい、同駅と浅草線新橋駅の間を結ぶ短絡線を経由。E5000形は短絡線で大江戸線車両と連結し、浅草線に入ります。
このような短絡線は、浅草線~大江戸線だけでなく、東京メトロや大阪メトロにも設けられています。大規模な検査のための車両基地は、各線ごとに設置するのではなく1か所にまとめた方が効率的なためで、たとえば東京メトロ南北線の車両が千代田線の車両基地で検査を受ける際などに使用されています。
ただし、都営地下鉄が他と異なるのは、リニアモーター式を採用している大江戸線の車両は、浅草線ではそのまま走行できないこと。そのため、日本の地下鉄では唯一の存在であるE5000形が、浅草線内で大江戸線車両をけん引しているのです。
この回送列車が走るのは深夜で、ほとんどの一般利用者に見られることはありません。ただし、浅草線では終電間際の運転となっており、運が良ければその姿を見ることができます。