帰省ラッシュや行楽シーズンになると、「〇〇新幹線の乗車率は120パーセント」といったニュースが報道されます。この乗車率とは、定員に対してどれくらいの乗客が乗っているかを示すもの。たとえば定員が100人の車両では、乗車率120パーセントとなると120人の乗客が乗っていることになります。
定員というと、オーバーしてしまうと危ないというイメージがありますが、鉄道業界では車両定員を超えて乗客が一般的。なぜなのでしょうか。
日本民営鉄道協会のウェブサイトにある「鉄道豆知識」を見てみると、定員には、座席数を算定した「座席定員」、通常の運行に支障のない定員数を示した「サービス定員」、さらに車両の構造または運転上、それ以上乗っては危険だという員数を示す「保安定員」の3つがある、といいます。鉄道業界では、サービス定員を車両定員としているため、これを超えても安全上問題がない範囲までは乗車が可能となっているのです。
鉄道車両の定員は、JIS規則で算出方法が決められています。座席定員は文字通りの座席の数で、新幹線や特急車両など、立席を基本的に考慮していない車両では座席定員=車両定員です。他にも「立席定員」があり、これは高さ190センチを確保している部分の床面積から算出したもの。通勤車両の定員は、座席定員と立席定員を足したものになります。
数値で算出する定員は、実際に乗車できる人数との差があります。たとえば、つくばエクスプレスの最新型車両であるTX-3000系は、ドア上に液晶車内案内表示器を設置したことで、この部分の高さが基準である190センチを割ってしまったため、既存車両よりも数値上の定員が減少しています。しかし、実際にはこの部分でも185センチ以上の高さが確保されているため、事実上は大きな差はないと言えます。
余談ですが、バスの定員は保安定員となっており、80人乗りであれば80人を超えて乗せることはできません。そのため、定員制の高速バスはもちろん、立席が当たり前の路線バスでも、定員を超えそうだと運転士が判断した場合には、バス停で乗客が待っていても通過することがあります。