JR西日本では、関西国際空港へのアクセス特急列車として、京都~関西空港間などで「はるか」を運転しています。
この「関空特急」は、日中は毎時0分および30分に京都駅を出発するダイヤが組まれています。しかし、同駅の時刻表を見ると、毎時0分・30分には、「はるか」と同じ下りの「新快速」が発車するダイヤが組まれています。しかも、新大阪駅の到着時刻を見ると、特急料金が必要な「はるか」よりも、特急料金不要の新快速が先に着くダイヤ。つまり、「はるか」の方が京都~新大阪間の所要時間が長くなっているのです。まるで「特急料金の払い損」ですが、なぜこのようなダイヤとなっているのでしょうか。
「はるか」が新快速よりも遅いのは、列車が走るルートが理由です。下りの「はるか」は、京都駅から向日町駅付近までの間は、新快速が走る線路ではなく、山陰本線(嵯峨野線)や貨物線の線路を経由しています。特に京都駅付近ではスピードを上げることができないため、同駅始発の下り「はるか」は、同じ時間に京都駅を出発する新快速に、易々と追い抜かれる光景が毎日見られます。
このような京阪間だけの視点では、「はるか」は新快速に劣る列車となってしまいます。しかし、「はるか」は関空へのアクセスのための列車。京都→新大阪間の所要時間こそ新快速より遅いのですが、京都駅から関西国際空港まで乗り換えなしで結ぶという価値は、新快速にはありません。要は目的が異なるのです。
そもそも、「はるか」が京都駅でこのような運転体系となっているのは、駅北側の烏丸口側にあるホーム(30番線)を使用しているため。かつては烏丸口付近に「京都エアシティターミナル」があり、「はるか」とこの設備が接続するサービスが提供されていました。
「はるか」が京都駅で専用ホームを持っているということは、他列車との乗り間違い防止というメリットになります。しかし、「はるか」は京都駅付近で嵯峨野線の線路を経由しており、さらに同線は京都駅付近が単線となっているため、「はるか」の存在が嵯峨野線増発の障害となっていることも考えられます。JR西日本では、2029年度にも「はるか」を山科駅発着に延長することを発表していますが、これが実現すると「はるか」は30番線発着ではなくなるため、嵯峨野線増発の余地も生まれてくるかもしれません。
ちなみに、「はるか」は京都駅付近以外でも、さまざまな短絡線や貨物線を駆使しています。茨木駅付近から西九条駅までの間は、東海道本線の支線「梅田貨物線」を経由しており、東海道本線(JR京都線)から、大阪駅の地下ホーム(うめきたエリア)を通り、大阪環状線へと抜けています。また、新今宮~天王寺間では、大阪環状線ではなく関西本線(大和路線)の線路を走行。さらに天王寺駅構内では、大和路線から阪和線への短絡線を経由しています。