湘南の海沿いを走り、神奈川県の鎌倉と藤沢を結ぶ江ノ島電鉄(通称「江ノ電」)。江ノ島~腰越間には道路上を走る区間(「併用軌道」と呼びます)があり、路面電車の風情を楽しめる路線としても知られています。
ですが、江ノ電の併用軌道区間、この江ノ島~腰越間以外にもあることは、ご存知でしょうか。
その場所は、合計3か所。鎌倉側から順に、「極楽寺~稲村ヶ崎間」「稲村ヶ崎~七里ヶ浜間」「七里ヶ浜~鎌倉高校前間」の、道路と線路が並行しているところです。これらの区間には、ガードレールがわずかに設置されている以外、道路と線路を仕切るものはありません。バラスト(砂利)が敷かれているため、はた目にはわかりづらいのですが、じつはこの線路がある部分も、道路の一部という扱いです。結果、これらの区間は併用軌道の仲間となります。熊本電気鉄道の藤崎宮前~黒髪町間にある道路と線路が並行する部分も、同じ事例です。
見た目はフツーの線路。けど、じつは併用軌道。筆者はそんな線路を、「なんちゃって路面区間」と勝手に呼んでいます。
これといった仕切りもなく、道路のすぐ横を電車が走る姿には、危なっかしさを感じるかもしれません。ですが、そんな区間でも列車の接近を知る手段があります。それが、線路わきにあるランプ。列車が近づくと、江ノ電では青色の、熊本電気鉄道では赤色のランプが点滅し、周囲に注意を促します。もちろん、近くに踏切があれば、その音で列車が来ていることを判断できます。
ちなみに東京都交通局の都電荒川線などでは、幅の広い道路の中央に線路を設け、自動車と電車が走る部分を分離している区間が見られます。この線路部分も道路の扱いとなっており、分類上は併用軌道。つまり、「なんちゃって路面区間」の仲間といえます。