1978年に開港した成田空港は、羽田空港とともに、東京を、そして日本を代表する空の玄関口です。開港時は空港直結の公共交通機関が高速バスに限られ、アクセス性の悪さが課題となっていましたが、1991年にはターミナル直下に鉄道が乗り入れ、諸外国なみの利便性を持つアクセス手段が整備されました。
そのアクセスの一翼を担っているのが、JR東日本が運行する「成田エクスプレス」です。
成田エクスプレスは、八王子・新宿・大船~東京~成田空港間を結ぶ特急列車。都心~成田空港間では京成電鉄の「スカイライナー」より所要時間が掛かりますが、乗り換えなしで新宿駅や横浜駅などから成田空港へと向かうことができるのがメリットです。
初代の車両は253系。グリーン個室や、斜め方向に向きを固定できるグリーン車の1人掛け座席、海外の車両に倣ったボックスシート(後に集団見合い式に改造)など、日本では珍しい車内設備を持った車両でした。
車両のカラーリングは、「極地の白」「成層圏の空のグレー」「地平に輝く太陽(の赤)」「果て無き黒い宇宙(の黒)」の4色。さらに、超音速旅客機「コンコルド」をモチーフとしたかのようなロゴマークも設定されました。
京成成田スカイアクセス線の開業に1年先立つ2009年には、2代目車両となるE259系がデビューしました。グリーン個室などの特徴的な設備は消え、他の特急車両に近いオーソドックスな設備とはなりましたが、カラーデザインは253系から引き継がれ、成田エクスプレスというブランドイメージを継承しました。
空港輸送がメインの成田エクスプレスですが、朝・夕夜間には千葉駅や佐倉駅に停車し、通勤需要にも応えています。2022年3月のダイヤ改正では、日中時間帯にも千葉駅に停車する列車が設定され、空港アクセス以外でも従来以上に利用しやすくなっています。
2023年春には、新型コロナウイルスの影響が落ち着きつつあり、海外からの旅行者が再び訪れるようになっています。しかし成田エクスプレスは、2023年春のダイヤ改正では大きな変更はなく、今後もしばらくは空港アクセスと地域需要の双方に応えていくことになるようです。