東京の中心エリアに含まれる新宿、渋谷を起点に、八王子、相模原、武蔵野方面へと根を張る京王電鉄。現在の社名に変更されたのは、1998年。すでに四半世紀の時間が流れようとしていますが、沿線の一角には、かつての社名である「京王帝都電鉄」の表記が、現在も残されています。
京王帝都電鉄が発足したのは、1948年のこと。現在の「京王線」にあたる京王電気軌道、「井の頭線」にあたる帝都電鉄の2社分の路線をまとめた鉄道会社として設立されました。帝都電鉄は戦前、小田原急行鉄道(現在の小田急電鉄)に吸収合併され、同社の帝都線となっていました。
同線の転機は、1942年。小田急が東京急行電鉄(現在の東急電鉄)に吸収され、帝都線の名称が現在の「井の頭線」に変わります。1944年には京王電気軌道も東急に編入され、現在の京王電鉄が運営する路線が、同じ会社に属することになりました。1948年、東急の路線の再編を機に、京王線と井の頭線は同社から分離。両線をひとつの会社で運営することになりました。その社名を、「京王線」の路線名と井の頭線のかつての路線名を入れた「京王帝都電鉄」としたのです。
1998年に「帝都」の文字が外れ、社名からは井の頭線の歴史をうかがうことができなくなりました。しかし、線路沿いのちょっとした場所には、昔の面影をまだ見ることができます。お出かけに適した春の日に、残された鉄道の思い出を探してみるのも、よいかもしれませんね。
今回、筆者が京王帝都電鉄の表記を見かけたのは、井の頭線の沿線でした。かつて帝都電鉄だった同線が、その名前を忘れまいと旧社名を残しているように思えたのは、気のせいでしょうか。