4月17日、富山市長の会見を伝えるニュースのなかで、鉄道関連の明るい知らせを耳にしました。富山市の路面電車の富山駅南北接続によって、利用者が増加したというのです。
路面電車の南北接続は、JR富山駅の高架下に停留所を設け、同駅南側の富山軌道線と北側の富山港線を結んだものです。路線の長さは250メートルで、2020年3月に開業しました。
地元メディアの報道によると、感染症流行の影響などから、富山軌道線全体の利用者は南北接続前より減っていることが、市の調査でわかっています。一方で、軌道線の利用者は、富山港線の区間だけで約1割、富山駅の南北をまたぐ利用者は2倍以上にも増えました。わずか250メートルの小さな路線ですが、生んだ需要は大きいといえるでしょう。
利用者が増えただけでも快挙といえますが、さらに特筆すべきなのは、その半数が「自動車からの転換」であること。2022年3月現在、富山県の世帯あたりの自動車普及台数は1.652台(東京都の普及台数は0.421台)と高く、全国2位となっています。自動車保有率の高い地域における鉄道利用者の増加は、鉄道業界全体で見ても希望の光になるのではないでしょうか。
北側の富山港線は、2006年の路面電車の開業により(2006年)、利用者数は営業主体がJRだった頃(2005年)から平日で約2.1倍、休日で約3.4倍にも伸びたそうです。また、2007年度以降、富山軌道線の利用者数も増加傾向にありました。これは、ICカードシステムや低床車両の導入などの取り組みが背景にあるとされています。
また、大阪の阪堺電気軌道でも、2009年度以降の一時期、乗降客数が増加傾向にありました。地元自治体による支援や、沿線に商業施設が開業したことなどが影響したものとみられます。地域の協力や沿線施設への旅客輸送により、需要を開拓できたひとつの例といえるでしょう。
沿線活性化の波に乗り、利用者の利便性を追求すれば、鉄道の需要はまだ大きくできる余地があるということでしょう。地域に溶け込み、利便性を追求し、利用者に愛され、より便利な鉄道に成長していく。感染症流行という厳しいご時世のなかでも、負けずに前進する鉄道の力強さに、期待したいところです。