力強く煙を吐き出して走るSL(蒸気機関車)は、その迫力ある姿が鉄道ファン以外にも人気です。そんなSLを走らせている会社の一つが真岡鐵道。週末を中心に「SLもおか」を走らせている同社ですが、このほかにも、真岡駅横にある博物館「SLキューロク館」にて、蒸気ではないものを使うSLを走らせています。
SLキューロク館に展示されているのは、9600形49671号機と、D51形146号機。前者は土休日に、後者は月に数回程度、構内の線路を走るのですが、この際には圧縮空気を使って走行するのです。
本来の蒸気機関車では、石炭や重油などを燃やし、水を温めることで蒸気を作っています。仕組みとしては巨大な湯沸かし器のようなものですが、これを維持し、走行させるには、さまざまなノウハウが必要で、コストも掛かります。動態保存列車として走らせるならともかく、博物館で展示運行するためには、ここがネックになってしまいます。
そこでSLキューロク館では、本来は石炭を搭載する炭水車の中に、コンプレッサーを設置。これで圧縮空気を作ることで、蒸気の代わりとしているのです。石炭を燃やしていないので、本来のSLのように煙をモクモクと出して走ることはありませんが、大きな黒い車体が走る姿自体は、やはり迫力があります。
圧縮空気で走る機関車という考え自体は、古くから火気厳禁の工場などで採用されていました。蒸気機関車の保存方法で採用されるようになったのは、比較的最近のこと。今ではSLキューロク館のほか、えちごトキめき鉄道の「直江津D51レールパーク」や若桜鉄道の若狭駅などでも、同じように圧縮空気で走るSLが見られます。