鉄道コム

鉄道コらム

田園都市線との直通先は銀座線だったかも!? 計画が二転三転した「東急新玉川線」

2023年12月29日(金) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

渋谷駅と中央林間駅を結ぶ東急田園都市線は、渋谷駅で東京メトロ半蔵門線と直通し、神奈川県北部から東京都心部への直通アクセスを提供しています。しかし、この路線のうち、かつて「新玉川線」と呼ばれた区間の直通相手は、当初は銀座線となる計画でした。

現在の東京メトロ銀座線の車両
現在の東京メトロ銀座線の車両

かつて新玉川線と名乗っていた、田園都市線の地下区間である渋谷~二子玉川間は、路面電車「玉川線」を代替する路線として開業しました。この玉川線は、1940年代後半~1950年代前半、高架線などの専用軌道を建設する計画が持ち上がったことがありましたが、結果的にどれも立ち消えとなっていました。

一方の銀座線では、1946年12月に発表された戦災復興計画で、渋谷~大橋(現在の池尻大橋駅付近)間の延伸を計画。以降、国の「都市交通審議会」による答申でも、三軒茶屋方面や二子玉川方面などへの延伸計画が盛り込まれていました。

加えて、都市交通審議会の答申第1号(1956年)では、地下鉄と郊外私鉄の直通運転に触れられます。これを受けて、浅草線と京成や京急の直通、日比谷線と東武や東急の直通が動き出したように、玉川線と銀座線の直通計画も始動。玉川線を高架化し、銀座線と直通するという計画で、東急が建設免許を申請しました。

現在の田園都市線沿線のニュータウンから都心方面への直通運転を考えるようになった東急は、最終的に、銀座線に代わる地下鉄新路線の建設を要望。結果、1968年の国の答申で、現在の半蔵門線となる路線計画が盛り込まれ、建設に至ったのです。

計画変更の結果、乗り入れ相手は現在の半蔵門線となりました
計画変更の結果、乗り入れ相手は現在の半蔵門線となりました

もし仮に、銀座線と(新)玉川線の直通計画が実現していた場合、今ごろは輸送力の小ささが問題となっていたはずです。現在の田園都市線は、20メートル級車両の10両編成で運転されていますが、一方の銀座線は、16メートル級の6両編成。編成定員で具体例を挙げると、東急田園都市線用2020系の約1500人に対し、東京メトロ銀座線用1000系では約600人と、2倍以上の差がついているのです。さらに、東急の各線(玉川線や世田谷線などの路面電車を除く)と銀座線ではレール幅が異なります。仮に銀座線が二子玉川駅まで乗り入れていた場合には、新玉川線と田園都市線の直通は実現していなかったと考えられます。

なお、当初の玉川線高架移設計画では、現在よりも南側を通るルートでした。また、銀座線との直通が決まった後も、三軒茶屋~桜新町間のルートや構造は異なっていました。今よりも北側の弦巻を経由し、さらに半分ほどは高架線。もしこの計画が実現していれば、三軒茶屋や二子玉川の風景、そして田園都市線系統の路線網は、今と大幅に異なるものになっていたでしょう。

 

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

高崎・盛岡に新型気動車

ハイブリッド気動車「HB-E300系」2025年度下期デビュー。八高線や釜石線などに投入。

画像

東武の車両「記録推奨度」

この車両、いつまで走る? 引退が危ぶまれる車両や、見た目が変わりそうな車両をご紹介。今回は東武編です。

画像

4000系が「機関車風」塗装に

「西武秩父線開通55周年記念車両」11日運転開始。4000系をE851形を模した塗装に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、高倍率ズーム・広角レンズ編です。

画像

京都鉄博に381系

12月12日~17日に特別展示。16日までは、一部で「スーパーくろしお」色ラッピングも実施。

画像

11月の鉄道イベント一覧

数百件の情報を掲載中。鉄道旅行や撮影の計画には、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。