「江ノ電」の名前で親しまれる江ノ島電鉄で、4月28日、お菓子などの大手メーカーである明治の広告電車が運用を終えました。
同社の車体広告が江ノ電で始まったのは、1992年のこと。江ノ電では、車体に広告を掲出することは珍しくありませんが、出稿期間の長さ(31年)は明治が断トツでしょう。また、明治の広告は、車体のみならず、駅のベンチに入ったことも。長い歴史の中で、両社の関係性は深いものだったといえるでしょう。
明治の広告掲出を最初に担当した車両は、300形の301編成(1992年に引退)。広告の内容は、現在も西日本で販売されている「カール」です。車体に広告を出すだけなく、塗装そのものをスカイブルーをベースとした、いわゆる「納涼電車」を思わせるようなものに変更。江ノ電の標準色(クリーム色と緑色のツートン)と大きく異なるスタイルが注目を集めました。その後も、同社の車体広告は車両を変えながら、車体全体を特別塗装とするかたちで続き、近年に至ってきました。
2017年8月、「カール」が東日本での販売を終了したことを機に、広告の内容が「きのこの山」「たけのこの里」に変わります。ネット上でも話題になる「きのこたけのこ戦争」が、鉄道車両でも展開されるようになりました。
2018年、広告車両がリニューアル工事に入り、塗装が江ノ電の標準カラーに戻るとともに広告も外されました。広告は別の車両に引き継がれましたが、塗装は変更されず、標準色のままとされました。結果、特別塗装形式の広告は26年の歴史で終わることになります。その後も広告の掲出車両が何度か変わり、最後は500形502編成がその役を担っていました。
江ノ電の約120年にわたる歴史のうち、じつに4分の1の期間を走り続けてきた明治の広告車両。特別塗装で見る人の目を楽しませてくれた日々も、今は昔。今回の運用終了は少し残念ですが、近い将来、広告などによる新たなデコレーション車両が見られることに、期待したいものです。